原作小説の完結第3巻を前後編で映像化したパート1。字幕と吹替で二週間無料配信。
デスゲームのさなかに救出された少女カットニス。独裁国パネムに反旗をひるがえして消滅したはずの第13地区による作戦だった。
第13地区の首相はカットニスととりひきし、パネム首都キャピタルから亡命した映画監督にプロパガンダ映像をとらせる。
一方、救出できずキャピタルに残されたパートナーのピータは、パネム側のプロパガンダ番組に起用されていた……
これまでのシリーズは、1作目は用意された枠組み内で戦う定番のデスゲーム作品だったし、2作目はデスゲームを利用して反旗をひるがえす勧善懲悪だった。
一方この3作目はデスゲームはおこなわれず、その勝者として人気を集める主人公たちが両陣営に利用される物語となっている。独裁と対抗する構図が複雑になった。
反乱軍は女性の首相もふくめて多くの犠牲をはらっているし、子供を危険にさらすことを嫌悪するが、地味で統制されて一体化された地下社会は共産国家のようでもある。
カットニスはピータの救出を求めて、しかたなく反乱軍に利用されるが、演じる姿はぶざまきわまりない。各地の戦乱を目撃することで心底から反乱をうったえるようになるが、それ自体が周囲にお膳立てされた痛々しさがつきまとう。
カットニスが見事にプロパガンダを演じられるようになるのは、キャピタルの文化人が周囲をささえてから。最初からキャピタルに利用されているピータは、優しく個人の視点から平和をうったえる姿が撮影され、ずっと表現として巧妙だ。
もちろんプロパガンダにあおられた側面はあるとしても、各地で蜂起する名も無き人々の姿は気高い。
インフラを破壊することでキャピタルに打撃をあたえたり、首相は戦闘をさけることで爆撃をきりぬけたり、VFXを活用したSF戦記物としても見ごたえある。
公開された2014年にタイや香港で反政府の旗印としてつかわれるだけのことはある作品だ。
ピータもプロパガンダに利用されるなかで、ひとつの情報をカットニスへつたえる。ゲームはしょせん見世物だとしても、だからこそ描ける真実がある。