デジモンシリーズ初のアニメ作品にして、細田守の初監督作品。1999年、TVアニメ1作目の1日前に公開された。約半年間無料配信。
ある夜、団地の頭上でデジタルな数字があつまり、一室のパソコンモニターから卵を生みだす。それを目撃した幼い兄妹は、ふたりだけで卵からあらわれた不思議な生物を相手にする……
ストーリーは、「進化」によって姿を変え巨大化していくモンスターという設定と、それを目撃する子供たちだけのドラマにしぼっている。
子供の物語だからこそカメラ位置は子供の視点より高くなることはないし、大人の顔は上半分がフレーム外に切れている。
そしてまだ言葉が話せない妹と、妹をまかされて精神年齢が高い兄が、モンスターとコミュニケーションを模索し、それぞれの結論にたどりつく。短編でありながら充実した成長のドラマになっている。
もともとTV版を前提としない企画ということもあり、この映画だけ見ても独立して楽しめる。
映像面もすばらしい。パースの正確なアニメーター山下高明が作画監督をつとめ、当時のリアルな団地の風景にデジモンという異物が入りこんだ不思議な出来事を映しとっている。
今回の配信はリマスター版なのか、高画質にするとDVDよりも線が美しい。当時はまだアニメ制作においてデジタルはCG的な効果につかわれるだけで、まだフィルムで撮影されたアナログだからこそ、リマスターによる精細化に耐えるのだろう。
モンスターとの楽しい生活や、変化に兄妹がひきさかれるサスペンス、怪獣映画のような激しいバトルまで見どころがいっぱい。当時の才気あふれる細田守が正面から娯楽に徹した作品のひとつとして必見の傑作。