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フリームービーメモ。GYAO!、YOUTUBE、バンダイチャンネル、ニコニコ動画、等々で公式に無料配信されているアニメや映画の情報や感想

現代エンタメとして原典を尊重しつつ、ポスト311作品として光子力の光と闇を描く『劇場版 マジンガーZ / INFINITY』(01:34:48)配信期間:2024年1月26日20時~2月9日20時

大震災を受け、能登出身者であり記念館が全焼する被害もあった永井豪の最新アニメ映画を、2週間チャリティー無料配信。

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かつて敵が襲ってくる目的だった理想的エネルギー「光子力」。それが世界的な技術革新をもたらすと同時に、異なる世界線から巨大なマジンガー型遺跡インフィニティを呼びよせる。

遺跡からあらわれた人工知能少女を主人公が育てる一方、かつての敵Dr.ヘルがロボット軍団をもってインフィニティを確保。戦士を辞めた主人公は、広報用の後方要員として配置されるが……

 

かつて大ヒットしたロボットアニメ『マジンガーZ』と続編『グレートマジンガー』の物語をそのまま引きつぎ、大人になった主人公たちのとまどいと再起を描いた。

合作漫画家「うめ」のシナリオ担当小沢高広が、外伝漫画につづいて今回のアニメ脚本を担当。生き生きとしたキャラクターで重いメッセージを軽やかに見せる。

古臭いといっていいキャラクターや設定を、現代的な問題をかかえた社会に挿入することで、たがいを尊重すべき存在として浮かびあがらせる。現代アメコミヒーロー映画が成功したメソッドだ。

 

光子力プラントに反対する住民の立看板をチラリと見せたり、マジンガーをめぐるデモを見せたり、意見百出してまとまらない新国連のありさまをDr.ヘルが「多様性」と批判したり。

そうした反体制的な描写が、皮肉をまじえつつも全否定はせず、弱き人々の叫びとして尊重していることも好ましい。

そして強者が世界を動かすのだという敵の世界観を、最終決戦で主人公側の作戦がゆるがす。ロボットアニメとしてのカタルシスが、社会的なメッセージとかさなり、物語を力強く支えた。

 

監督は映画プリキュアシリーズの初期を担当した志水淳児。あまり絵作りがシャープな監督ではないし、飯島弘也の濃厚なキャラクターデザインも現代の流行りではないが、結果的に1970年代作品の直接的な後日談らしい雰囲気がある。

一方、3DCGで描かれた巨大ロボット描写はなかなか良い。原典の解像度をあげればこう見えるだろうというデザインラインの重厚なメカが、ところせましと暴れまわる。

特に最終決戦でのマジンガーZの全身武器っぷりは、主題歌にある「鉄の城」そのもの。直前まで鬱屈した展開がつづいただけに爽快感たっぷりだ。

中盤で量産型マジンガーを主人公が操縦し、一線をしりぞいているのに他のパイロットより巧みな動きを見せた描写も効いている。マジンガーZの全力を引き出せるのが主人公しかいない説得力が、きちんと物語をとおして説明されている。

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戦争のなかで主人公のドラマだけ終えたTVアニメの後日談として、残された者たちのシリアスな苦難を美麗な映像で描いた劇場版『機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-』(1:19:55)配信期間:2024年2月1日21時~2月15日20時59分

1998年に公開された劇場版。キングレコードの公式チャンネルで2週間無料配信。

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戦争終結から3年後、ナデシコの艦長のミスマル・ユリカと恋人になったテンカワ・アキトはともに行方不明になり、艦長は16歳となったホシノ・ルリがつとめていた。

ひとときの平和のなかでナデシコの見学がおこなわれたりするなかで、戦いを忘れられない者たちがうごめき、闇に落ちたようなアキトが来訪する……

 

會川昇など脚本家がぬけて、佐藤竜雄監督が脚本も書いたことで、あいかわらずパロディは多いがふざけたムードは消え去った。

メインキャラクターの幸福を望んでいたファンには賛否両論だったが、国家と文化の皮肉めいた関係をブラックユーモアにまぶしたTVアニメより単独作品として見やすい。

キャラクターデザインの後藤圭二が作画の全編に手を入れて、現在でも視聴にたえる精度の高い映像をつくりだしている。

 

TVアニメ版はGYAO!などでもくりかえし無料配信され、今回も3ヶ月前に先行配信していたが、劇場版の無料配信はきわめて珍しい。

もちろん時代を感じさせる部分はあるが、一見の価値はある作品だ。

ソ連軍が記録した、スプラッターでマッドなナチスドイツの改造人間『武器人間』(01:24:00)配信開始:2024年1月31日4時5分

 2013年のオランダと米国の合作映画が、ABEMAで一週間の初無料配信。

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第二次世界大戦の末期、ソ連軍の少人数部隊がドイツの占領地に潜入する。散発的な戦闘をおこない、不思議な死体を目撃しながら、救援をもとめる同胞部隊を見つけようとしていた。

しかしその潜入には当時最新のカラーフィルムをつかう撮影者が同行していた。その撮影者の記録した映像には、恐るべき改造人間が映し出されていた……

 

フェイクドキュメンタリーの一種、ファウンド・フッテージの手法でつくられた低予算スプラッター映画。

銃口から出るマズルフラッシュが平面的かつ形状が同じで合成とあからさまだし、潜入部隊にしても人数が少なすぎる。大規模な爆撃は音と振動で暗示するだけ。しかし村ひとつから煙がのぼらせたり、広い地下道や工場ひとつをマッドサイエンティストらしく作りこんでいて、低予算ホラーとしては意外と見ごたえある。

劇中のカメラで切りとった狭い視界のおかげで粗も気にならない。手持ちカメラの揺れつづける映像に酩酊感をおぼえるし、明らかに危険な状況で撤退を選ばない兵士の愚かさにストレスがたまるが、それもホラー映画らしさではある。

それに低予算とはいえ死体や流血の描写で出し惜しみがない。1時間半に満たない短尺とはいえ、開始15分以内に死体が映し出されるテンポの良さはありがたい。

そして改造人間のデザインはシルエットからして多種多様で、質感もギミックもしっかりスチームパンクな魅力がある。攻撃手段や動作にもバラエティがあり、大挙して登場してくるだけで楽しい。この種の低予算ホラーなら怪物は1体や2体で茶を濁したり、全身すら見せなかったりする。つかうべき予算はしっかりつかう判断が素晴らしい。

 

物語は無きにひとしいが、ABEMAで無料配信する低予算ホラーのなかでは見どころが多くて飽きさせない一品だ。

ちなみに今回に無料配信される吹替版は『ドラえもん』関係の声優を集めて一部で話題となった。

改造人間をつくったマッドサイエンティストを演じるのは先代スネ夫肝付兼太。記録撮影するユダヤソ連兵は現のび太の父の松本保典で、最も若いソ連兵を先代のび太を演じた小原乃梨子。看護師の現地女性は現のび太大原めぐみ。他にも先代と現在のジャイアン声優がメインキャラクターで参加。

本編に参加していない先代ドラえもんを演じた大山のぶ代も、日本独自の予告編でナレーションをつとめている。

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