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現代エンタメとして原典を尊重しつつ、ポスト311作品として光子力の光と闇を描く『劇場版 マジンガーZ / INFINITY』(01:34:48)配信期間:2020年6月1日4時~6月7日26時

世界では2017年に、日本では2018年に公開された完全新作映画。昨年9月に世界初無料配信され*1、今回は1週間無料配信。

abema.tv

かつて敵が襲ってくる目的だった理想的エネルギー「光子力」。それが世界的な技術革新をもたらすと同時に、異なる世界線から巨大なマジンガー型遺跡インフィニティを呼びよせる。

遺跡からあらわれた人工知能少女を主人公が育てる一方、かつての敵Dr.ヘルがロボット軍団をもってインフィニティを確保。戦士を辞めた主人公は、広報用の後方要員として配置されるが……

 

かつて大ヒットしたロボットアニメ『マジンガーZ』と続編『グレートマジンガー』の物語をそのまま引きつぎ、大人になった主人公たちのとまどいと再起を描いた。

合作漫画家「うめ」のシナリオ担当小沢高広が、外伝漫画につづいて今回のアニメ脚本を担当。生き生きとしたキャラクターで重いメッセージを軽やかに見せる。

古臭いといっていいキャラクターや設定を、現代的な問題をかかえた社会に挿入することで、たがいを尊重すべき存在として浮かびあがらせる。現代アメコミヒーロー映画が成功したメソッドだ。

 

光子力プラントに反対する住民の立看板をチラリと見せたり、マジンガーをめぐるデモを見せたり、意見百出してまとまらない新国連のありさまをDr.ヘルが「多様性」と批判したり。

そうした反体制的な描写が、皮肉をまじえつつも全否定はせず、弱き人々の叫びとして尊重していることも好ましい。

そして強者が世界を動かすのだという敵の世界観を、最終決戦で主人公側の作戦がゆるがす。ロボットアニメとしてのカタルシスが、社会的なメッセージとかさなり、物語を力強く支えた。

 

監督は映画プリキュアシリーズの初期を担当した志水淳児。あまり絵作りがシャープな監督ではないし、飯島弘也の濃厚なキャラクターデザインも現代の流行りではないが、結果的に1970年代作品の直接的な後日談らしい雰囲気がある。

一方、3DCGで描かれた巨大ロボット描写はなかなか良い。原典の解像度をあげればこう見えるだろうというデザインラインの重厚なメカが、ところせましと暴れまわる。

特に最終決戦でのマジンガーZの全身武器っぷりは、主題歌にある「鉄の城」そのもの。直前まで鬱屈した展開がつづいただけに爽快感たっぷりだ。

中盤で量産型マジンガーを主人公が操縦し、一線をしりぞいているのに他のパイロットより巧みな動きを見せた描写も効いている。マジンガーZの全力を引き出せるのが主人公しかいない説得力が、きちんと物語をとおして説明されている。