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独裁国家のデスゲームを、ジュブナイルとして真正面から実直に映像化『ハンガー・ゲーム』(02:22:22)配信期間:2021年5月29日~6月11日

2008年から人気を集めた米国のヤングアダルト小説が、2012年から映画化。シリーズが順番に字幕と吹替で無料配信。

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近未来、12地区にわかれた独裁国家は、1年ごとに各地区から男女ひとりづつを選び、殺しあわせるイベントをつづけていた。

貧しい第12地区で狩りをして暮らしていた少女カットニスは、妹の身代わりとしてゲームに志願する。

やがて国家の中心に集められた各地区のメンバーは、教育係に指導されながらチームとして勝利を目指す……

 

日本で映画化もされた人気小説『バトルロワイアル』を思わせる、ストレートなデスゲーム作品。

女性主人公が生きのびる女性小説家による物語を、のちに『オーシャンズ8』を監督したゲイリー・ロスが映像化した。

 

近年の日本でもWEB小説などで多数書かれたジャンルであり、そのなかで特に目新しいわけではない。

しかし多くのデスゲームが巻きこまれるサプライズを重視して、デスゲーム開催の設定を背景としてすませがちなところ、このシリーズは『バトルロワイアル』以上に国家の非道性をくわしく描いて、差別化に成功している。

何しろデスゲームが開始するのが映画がはじまって1時間以上たってから。エンディングをのぞいた本編で約半分にあたる。

そこまでで印象に残るのはVFXで描かれた近未来都市のキッチュさと、見世物としてのデスゲーム。映像としては『バトルロワイアル』より『スノーピアサー』が近い。

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デスゲームが見世物であるため、スポンサーを意識してキャラクターを演じることで、外部から支援を受けたりもする。

そのドラマの多重構造が、デスゲームというジャンルの悪趣味さを相対化しているようにも感じられた。

 

本筋のデスゲームも知恵と幸運のバランスが適度で、娯楽としてはよくできている。

いくら訓練で顔あわせしているとはいえ、24人もの参加者をていねいに描く時間がなさそうなところ、開始直後にあっさり半分近く整理するあたり気がきいている。

以降は終盤までは協力するチームが出たり、地形や自然を利用したり罠をしかけたり、デスゲームの定番を押さえてテンポ良く進行していく。

デスゲームをもりあげるため、主催者の介入でルールがガバガバになっている部分はある。だが、この作品では劇中でも見世物という設定なので、不自然とまではいえない。

見世物だからこそ、デスゲームを戦う参加者と、それを見る各地区の住民が相互作用する構造も面白い。

 

映像作品としては良くも悪くもハリウッドの水準レベルで、アクションでカットを割りすぎカメラをゆらしすぎという難点はあるが、それらもふくめて意外と普通に楽しめる一作。