シルベスター・スタローン主演で知られるシリーズ4作目。字幕と吹替の両方で無料配信。人体損壊描写がはげしいため要ログイン。
2020年の初無料配信の後、ミャンマーの民主政治が軍事クーデターによって破壊された現在に見ると、いっそう興味深い内容になっている。
世界中の戦場で心を閉ざしていったランボーは、もはや故郷に帰る気も起きず、タイの奥地で生活していた。
そこにビルマへ向かおうとするボランティア集団があらわれ、移動を助けるよう依頼する。彼らはビルマ国軍に虐殺されているカレン族へ医療をとどけようとしていた。
あまりに危険な旅であるため、気乗りしなかったランボーだが、結局は手を貸すことになり……
ちょうどビルマが完全に軍事政権へ舵をきった2007年の直後、2008年1月に公開された。現実に弾圧がつづくなかで多数のカレン族が撮影に参加し、性的暴行や手足切断といった残虐な行為を痛々しく演じている。
「最後」というタイトルをつけながら次作があるのはおかしいが、そもそも4作目の原題はただの「Rambo」。「First Blood」という原題の1作目を『ランボー』という邦題で公開したため、後のシリーズ邦題が少しずつ内容とずれてしまったパターンだ。
まず、状況設定だけなら平凡といっていい。危険な軍事独裁国家に「平和ボケ」*1なボランティアがおせっかいにいって拉致され、主人公が救出しにいく。武器をもってたちむかわなければ暴力には対抗できないというメッセージの娯楽作品だ。
しかしエンドロールまでふくめて約1時間半という近年のハリウッド大作には珍しい短い上映時間で、無駄なく濃密にまとまっている。後半約45分はほとんど戦闘の連続だが、戦闘目標や舞台や時間が変化していって単調ではないし、緊張感もとぎれない。
主人公はとにかく無敵で、たったひとりで多くの敵兵を倒していくが、スタローンの身体能力で充分に説得力があるし、ちゃんと入念な準備や伏線を活用した作戦で危機を脱していく。
同行する傭兵集団が強くても主人公ほどではないバランスなのもいい。対立したり助けたり足を引っぱったり、サスペンスとともにカタルシスを高めていく。ひとりひとりの個性もあわせて意外と傭兵たちも魅力的だった。
また、2015年にアウンサンスーチー勢力が民主政権をつくりあげながら、別の少数民族ロヒンギャへの弾圧はつづいていることを思うと皮肉な作品でもある。
このシリーズは3作目でも旧ソ連のアフガニスタン侵略に対抗する物語を描いたが、そこで主人公が味方したイスラム民兵がタリバンの源流になった。
敵と戦って殺さないと解決しないという思想の映画だが、敵を倒すだけでは終わらないという平和ボケにも一理あるのが現実なのだ。
しかし思えば1作目は、無意味なベトナム戦争で心身を傷つけた主人公の孤独を描いた作品だった。それをふりかえれば、答えは最初から出ていたのかもしれない。
*1:主人公が劇中でそう評する。