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中国特殊部隊のプロパガンダだからこそ、世界水準のアクション大作として完成度が高い『ウルフ・オブ・ウォー ネイビー・シールズ傭兵部隊 vs PLA特殊部隊』(01:30:05)配信期間:2020年8月27日~2020年9月24日

続編が先に無料配信された*1、2015年の中国映画。吹替と字幕で、一ヶ月足らず初無料配信。

gyao.yahoo.co.jp

仲間を守るため命令を無視して敵を射殺した狙撃手が、女性隊長がひきいる特殊部隊「戦狼」へ異動させられた。

そして狙撃手が戦狼の一員として実戦さながらの演習をしていたところ、謎の外国人傭兵部隊が乱入してくる……

 

約2時間かけてじっくりドラマも描いた続編と違って、こちらは中国の治安を守る部隊と犯罪組織のシンプルな対立を約1時間半でスピーディーに駆けぬけた。

 戦車や戦闘ヘリまでもちだした映像は、ミリタリ趣味を満足させるには充分。爆発の規模も動ける兵隊エキストラの数も大作感がある。素早い格闘戦もカメラワークも現代アクションの水準に達している。

特殊部隊内でプライドをかけた衝突はあるものの、良くも悪くも中国の大地を守る信念は一致しているので、無駄に足を引っぱりあってストーリーの流れを止めたりしない。逆に敵もただの犯罪者と雇われた傭兵でしかないのに、一国の特殊部隊にケンカをふっかけるという無茶をためらわずやりとげる。

 劇中で指摘されるように地雷原に逃げこんだ傭兵は空爆すれば中国側は傷つかず相手を倒せるが、その選択肢をとらず制裁しようとする。傭兵側が敵地で少数でも戦いぬけるように電子機器の動きを妨害する兵器を設定する。とにかく正面から戦うシチュエーションを作り出すためだけにドラマと設定が配置されている。

 

犯罪者は兄弟愛こそもっているが、生物兵器をつくれるデータを国外へもちだそうとしたりして、同情しようがない倒すべき敵という立場は崩れない。その犯罪者が中国と敵対する現実の国家を思わせる局面もなく、見ていて現実のニュースを連想することがなかった。

さらにエンディングは続編と同じくNGシーンを流すという、昔なつかしの香港映画のような能天気ぶり。この映画にメッセージ性などないのだと高らかに宣言するかのよう。

 

対立する勢力同士が正面から戦う娯楽としてノイズがないので、中国のプロパガンダという根幹にさえ目をつぶれば、素直に最後まで楽しめてしまった。

よくできたプロパガンダは、どのような立場から見ても一定の面白さがある。この映画もそうだった。