第二次世界大戦後の中国における国民党と共産党の戦いを描いた、2007年の中国映画。約2週間の無料配信。
『唐山大地震』などのフォン・シャオガンが監督。21世紀の映画だがフィルムはざらついていて、VFXなどもほとんど使われていないようだ。
しかし映像作品として、けして出来は悪くない。
前半の戦闘は、広々としたオープンセットに多数のエキストラを配置し、はげしい爆発と肉体損壊で、迫力ある戦場を描き出す。手持ちカメラで兵士を追いかけ、ポスト『プライベート・ライアン』として充分な描写ができている。
後半にうってかわって平和な戦後を映すが、娯楽色を増す以前の中国映画らしく、おちついた画面で美しい自然をきりとっている。雄大な風景は、部隊が正確な記録に残らず活躍が認められない主人公の孤立もきわだたせる。
肝心のドラマだが、いきなり描かれる国共内戦について説明がまったくなく、誰が何のために戦っているのかわかりづらく、最初はとっつきにくい。
最低限の歴史知識はあっても、前半は前線にいる主人公の視点から戦闘が延々とつづいて、全体状況がつかめないし、どこを落としどころとして戦っているのかもわからない。
しかしそのような出口の見えない戦場から撤退したがる部下を主人公が止めて、部隊が全滅する中間点から、これがどのような物語かわかってくる。
これは国家と軍隊に犠牲をしいられた兵士たちが、戦いの後に忘れられ、そうでなくても軽視されていく痛みを見つめ、その尊厳を回復しようと訴える物語だ。
各国の戦争映画で見られる定番ではあり、奮闘した兵士を称揚するドラマであることは間違いない。しかし同時に自国政府批判の要素もあるので、中国映画でありながらプロパガンダ臭さを感じさせない。
共産党軍側の不祥事もいくつか描写され、バランスがとれた見やすい内容になっている。たぶん日本の観客にとっても見やすい佳作だ。