2016年から2017年にかけてイベント上映され、原作単行本の特典となったOVA。前中後編を一挙に、一週間無料配信。
日本からイギリスにわたった少女チセは、骨頭の怪人に買われ、嫁となった。
幼いころの日本での体験にまつわる書籍がとどき、チセは魔法使いに説明する。
幼いころの自分がどのような状況に置かれ、何によって救われたかを……
初制作アニメ『進撃の巨人』が大ヒットしたばかりのWIT STUDIOがアニメーションを制作。
チセの日常にまとわりつく奇怪な怪物や、森の奥にある奇妙な図書館をていねいに作画して、劇場にかかってもおかしくないクオリティにしあげている。
TVアニメ版ではイギリスなど異国を舞台にしていたが、このOVA版では前日譚として日本での回想が大半をしめていて、リアルな肌触りがある。
白昼の見なれた住宅街に奇妙な怪物がうごめく情景はホラー感たっぷりで*1、なおかつチセだけ見えるシチュエーションが孤立のドラマをつくりだす。
親を失い、親戚に身をよせたチセは、その家になじめず、異物となって意図せず壊してしまう。
そこから逃げ出し、迷いこんだ森で、本という違う世界への扉を手にするチセ。それを教える司書らしき男は、チセの救い主のようだ。
しかし男もまた、ある意味で家の虜になってしまっていることがわかっていく……
ゲストキャラの男と、主人公の少女が、一種の鏡像関係にあるとわかっていく構図が美しい。ひとつの物語としてよくまとまっている。
各編の出来事が密接な関係をもっているので、今回のように一挙配信で見とおすのが良いだろう。伏線とその回収も理解しやすくなる。
ただ一点、男の現状を決定づけたトラブルは、夜に急いだ結果とはいえ単純な事故でしかなく、ドラマ性もなければ納得感もない。好みにもよるだろうが、ご都合主義ぶりを疑問には思った*2。