一触即発のアイルランドで治安維持のため投入された若い兵士のサバイバルを描く。2014年のイギリス映画が初無料配信。
イギリスから独立しようとする動きの絶えないアイルランド。陣営ごとの衝突がたえない街へ、英軍が投入される。もちろん市民が相手なので、安易に武器をつかうことは許されないはずだった……
この作品がすごいのは、サバイバルのスリルを静謐な雰囲気のなかで成立させていること。
パルクールのようなアクション演出を使いつつ、主人公は隠れるように街を逃げまどう。手間をかけた惨劇シーンなどもあるが、むしろ平凡な風景に暴力をおくことで禁忌感を強調するシーンが多い。
出会う誰が敵かわからない緊張感に満ちつつ、その風景は普通の人が暮らすモダンな街並み。テロを計画する過激派すら、常識人の側面を見せていく。
むしろ普通の街で軍服を着ている主人公こそが危険な異物ではないか?とも感じさせる。
この映画の作品解説は、あたかも街の暴動で兵士が危険にさらされたかのような表現が多い。
しかし実際の物語は、激しく抗議しつつも物理的な暴力にはうったえない住民に対して、イギリス側が弾圧をはじめたことが発端だ。
はっきりいって、主人公が孤立した責任の多くは英軍にある。そもそも使うわけにもいかない武器を、混乱した現場にもちこんだ時点で愚劣というしかない。
イギリス映画らしい沈鬱なドラマを、アクションエンタメの文脈で描ききった隠れた佳作だ。