1990年代に展開された怪獣映画三部作の、1998年に公開された3作目。おそらく初無料配信が一ヶ月。
妖精三姉妹が別れた過去、三つの小刀と対応するメタルがいれちがいになった。
現在、1999年の来襲を予言された恐怖の存在としてキングギドラが襲来。
都市を破壊しながら、子供たちを特殊能力でさらっていく……
感想が遅れたため、1作目と2作目はすでに配信終了。
三姉妹の因縁などは冒頭で説明されているし、人間側の俳優は1作ごとに入れかわっているのでドラマを追うには問題ないが、単独で見るには怪獣の設定がややわかりにくいかもしれない。
監督は1作目の米田興弘にもどりつつ、特技監督を若手の鈴木健二に交代。
これが初特技監督となり、2000年から公開された『ゴジラ』シリーズ2作品の特技監督をつとめ、『ウルトラマン』の21世紀初期シリーズにも参加した。
今作では目に見えて予算が不足。ミニチュアも皆無に近いところを、建物の壁に縮尺をあわせた石膏板を爆破し、実景の建物に合成。意外なほど現在のVFXと比べても遜色ない完成度で、低予算特撮で多用されていないことが不思議なくらいだ。
樹海のセットや恐竜時代のセットは広々として起伏があり、さすが東宝らしい大作感がある。当時の日本では技術力が足りない恐竜を、人形を棒で機械的に動かす手法をつかっているのも、ファンタジー映画らしい今作には合っている。
物語はファンタジーということを理解した上で、かなり厳しいしあがり。
何といっても対決する怪獣の両方が遠回りな方法をつかって、卑劣とまではいわないが、あまり良い印象をもてない。もともとキングギドラは華々しいデザインの割りに侵略者の手先だったりして小物っぽいが、子供たちをドームに閉じこめるあたり、古い特撮番組の悪の組織のようだ。その子供たちを移動する特撮も薄っぺらい合成で、同じ東宝とはいえ子供向けの映画『学校の怪談』を悪い意味で連想した。
対するモスラも、正面から戦って勝てないからと1億年以上前のまだ弱めなキングギドラを倒すという、ちょっとそれは卑怯じゃないかとツッコミたくなる展開。同じ子供向け作品で『ドラえもん のび太と鉄人兵団』もあるが、それはドラえもんたちが正面対決をしている時、敵から寝返った少女が自身もまた歴史から消え去ることを覚悟して時間を改変するドラマだった。そもそも過去の時点で敵を倒せば、最初から敵の襲来そのものがなくなってしまうはずだが、なぜか過去の改変成功と同調して現在の敵が姿を消していく*1。時間の改変にたちあった少年だけがキングギドラと妖精を記憶している、みたいないかにもなジュブナイル展開にはできなかったものか。
人間側で自衛隊などを出さず、子供と保護者のドラマなのは三部作全て同じだからいいとして、今回は人間側の努力にほとんど意味がないことも問題。長男の少年が主人公として妖精三姉妹を助けることは物語の主軸となっているが、ならばいっそのこと主人公以外の視点はほとんど排除して、妖精三姉妹のドラマに注力すべきだったのでは?と思った。
100分近くの長編映画で子供の観客を飽きさせないようトラブルやサスペンスをとぎれなく描写し、エンタメとしては成立している。
しかしメッセージがあからさまに教育的*2で説教臭いエンタメを当時の子供がどれほど素直に楽しんだだろうか?という疑問もある。いやもちろん楽しんだ子供もいるだろうし、それが悪いわけではけしてないが。