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高精度な巨大ミニチュア特撮でおくる怪獣ジュブナイル『小さき勇者たち~ガメラ~』(01:36:51)配信期間 2021年1月3日~1月23日

大映のオリジナル怪獣シリーズから、子供向け要素を抽出した2006年の日本映画。初無料配信が3週間。

gyao.yahoo.co.jp

かつて巨大怪獣ガメラが戦い、姿を消した世界。ひょんなことから少年が不思議な亀を育てはじめる。

その小さな亀トトは手足を縮めて飛行したり、ゾウガメのように巨大になっていく。

同じころ、少年が住む漁村で次々に人が殺されていく。それは怪獣のしわざだった……

 

大映を吸収した角川がシリーズ40周年を記念して企画し、『仮面ライダー』等の東映作品で活躍していた田崎竜太監督をむかえた。

かつて少年時代に猛々しいガメラの決戦を目撃した父と、幼く小さなガメラとともに育った息子の、ふたつの視点で物語が進行する。

 

子供の記憶をもつ大人と、現在の子供にアピールする作品になれば良かったのだが、残念ながらシリアスとファンシーのどっちつかずになってしまった。

怪獣に惨殺された犠牲者が流血する描写などは、それはそれで児童向け作品でもありうるシリアスさだが、トトを子供が育てて研究機関がねらう牧歌的なムードとあっていない*1

 

そしてクライマックスで、何も知らない子供たちがアイテムをリレーする展開で、決定的に物語が破綻する。

そうしなければならない理由を第三者の子供たちが知るプロセスを描いていないため、なぜか子供たちだけが正しいことを知っていて、親世代がそれを観察する物語になってしまった。

トトを育てる少年に共感していた観客は、ここで急にとりのこされてしまう。等身大の子供とともに進行したドラマは、美化された子供の行動を見あげるドラマになってしまった。

そのアイテムをめぐって何をすべきか、子供たちのあいだで都市伝説や噂として広がっている描写を入れるだけでも良かったのに……

 

ただ、物語はうまく整理されていないものの、特撮の見どころは多い。

金子修介監督や樋口真嗣特技監督によるリメイクシリーズ3部作がビスタサイズだったことに対して、こちらは横長のシネマスコープサイズ。

怪獣のサイズが比較的に小さいこともあり、緻密で巨大なミニチュアが広々とした空間にならべられ、そこで怪獣が軽快に戦うという珍しい情景が楽しめる。

前半の漁村や吊り橋などは日本の怪獣映画では見られないクオリティで、後半の廃墟化する都市もスケール感たっぷり。

イマジナリーラインを無駄に超えたり、街の距離感や位置関係がはっきりしない難点はあるが、特撮を楽しむ作品として無料なら見て損はない。

*1:スピルバーグ作品の失敗したパターンに近い印象。