かつて日本だけでなく世界的に恐怖をまきちらしながらシリーズを重ねるにつれネタ化したキャラクターを、正面から対決させる2016年作品。無料配信を2週間。
都市伝説として語られる、呪いのビデオと呪いの家。ひょんなことから呪いのビデオを見てしまった女子大生が、ちょうどそれを追い求めている大学教授へ相談する。
教授は喜んで呪いのビデオをDVD化しつつ、呪いを解くため霊能者を紹介した。しかしその霊能者はおごそかだが怪しげで、たよりになるのかどうかわからない……
『オカルト』等のフェイクドキュメンタリーホラーをオリジナルでつくりつづけている白石晃士監督が、有名でありつつも消費されきったシリーズを担当し、意外と普通のホラー映画としてそつなく完成させた。
痛ましい過去の怨念から呪いを伝播させる「貞子」と「伽椰子」。この映画はその過去についてはいっさい描かず、あくまで人が噂する都市伝説としてあつかっている。多くの説明を必要とする因縁をいっさい説明せず、どう行動すればどう反応するかという法則だけを重視。
本来のキャラクターと距離をとることで、きちんと怖かった原点を尊重し、怖さが消えた続編にもひきずられない。キャラクターの重みをコントロールすることでストーリーに無理がない。
特に「呪いの家」で恐怖を発動させる少年4人の行動は、呪いを使った自爆攻撃のような面白さがあった。対決にいたる経緯も、中盤の死を伏線にして貞子の行動原理を明確化しているので、意外と納得感がある。
霊能者という怪しげな設定も、段階をふむことで最低限のリアリティを確保しつつ、魅力的なキャラクターとなっていた。白石監督作品の旧作『カルト』と同じ手法だが、トンチキ霊能力バトルという点で韓国映画『哭声/コクソン』と比べたいところだ。
女子大生ふたりの重い想いが百合の域に達していたり、貞子を見たいと願う教授がいい性格をしていたり、家族愛が意外な見せ場になったり、他の登場人物のドラマも意外と見どころが多い。
呪いの攻撃が物理気味で、語り口のドライさもあって良くも悪くも洋画ホラーのような作品だが、期待しすぎなければきっと楽しめるだろう。