まるでライトノベルのような2018年の韓国映画。初無料配信が字幕と吹替で三週間。血みどろのアクションがつづくので、要ログインのR15。
謎の集団に追われて、幼い少女が酪農家に逃げこむ。養子となった少女は貧しい家族をささえるように育ち、ひとりの親友もできた。
しかし賞金目当ての親友にさそわれ、少女がスター発掘番組で活躍した時から、周囲の世界に異変が起き始める……
暴力団の抗争を描いた『新しき世界』や植民地時代の虎狩りを描いた『隻眼の虎』のパクフンジョン監督が製作や脚本まで担当。
全体的な印象は、悪い意味ではなく日本のライトノベルのよう。韓国映画らしい社会派要素がいっさいなく、純粋にエンターテイメントとして完成している。
超能力や疑似科学といった設定から、華やかな芸能や陰惨な闘争でいろどりながら、どこまでも少女のキャラクターをきわだたせることに作品の全要素が奉仕している。
長大な闘争の1シークエンスを切りとったような構成も、長期になりがちなライトノベルの序盤だけ映像化する通例を思わせる。さすがに物語は完結しているが、思いっきりエピソード1とアピールするサブタイトル演出が逆に楽しい。
そこで主演女優の、場面ごとに違った顔立ちに見える演技がすばらしい。田舎臭い酪農少女にも、発掘番組で注目される地味少女にも、能力を隠しもった超人にも、すべてを支配する狂女にすらも見える。メイクの方向性もあって容貌はけっこう地味だが、敵チームの紅一点が『キル・ビル』時代の栗山千明を思わせる一重美少女で、対比的に印象に残った。
宙を舞い念力を飛ばしあう異能アクションも、映像に説得力がある。ワイヤーアクションなのかVFXなのか、3DCGキャラクターなのか俳優を合成しているのか、動作も質感も自然になじんでいて区別できない。
粗が出る前にカットを割る編集の巧みさもあるだろう。スタントアクションもきびきび動き、血みどろの戦いでも爽快感がある。
レベルを上げつづけている韓国映画のアクション演出を、さらに一段ひきあげた。
年月をかさね、記憶をいつくしむストーリーもよくできている。
ジャンルを変転させながらも、すでに書いたようにライトノベル的な学園異能アクションな世界観につらぬかれているのだが、語り口のしかけに驚かされた。
ちゃんと伏線を引いて説得力があるトリックで、なおかつ「魔女」のキャラクターを明確にするドラマとしての意味もある。
ちょっとクセが強い作品ではあるが、エンタメを期待するならば見て損はない傑作。