テイラー・シェリダン監督による2017年の米国映画。無料配信が字幕と吹替で二週間。
先住民アラパホ族が移住させられた居留地ウインドリバー。夏でも雪が溶けないような山脈で、先住民の妻をもつ狩人コリーが仕事をしていた。
家畜を襲うピューマを駆除しようと雪山を移動していたコリーは、凍りついた少女の死体を発見する。旧知のBIA署長やFBIの女性捜査官と協力しながら、コリーは少女を死に追いやったものと対峙する……
TVドラマ俳優としてキャリアをつんだシェリダン監督は、『ボーダーライン』シリーズ等で脚本家としても経験をつみ、この作品で監督と脚本をつとめた。
カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門で監督賞を受けるほどドラマとして完成度が高く、遮蔽物の少ない雪原での銃撃戦の演出も目新しい。
『ボーダーライン』がそうであるように、米国がかかえる社会問題を背景にしながら、そつのないドラマと斬新なアクションで娯楽としての完成度も高い。
謎を解く過程で選択肢がない状況に追いやられた先住民の歴史と、それでも未来を目指した少女たちのドラマ、そして目先の娯楽を求めた男たちの愚かしすぎる罪が描かれていく。
白人でありつつ先住民との中間にいるコリーは、西部劇のアメリカンヒーローのように悪を罰する。一方で先住民は伝統をすでに失っているが、家族のため生きていくことを選ぶ。
古典的な西部劇が開拓民の白人をインディアンがおそう物語だったことに対して、この物語はインディアンを追いやった場所にまで新たに白人が利益を求めて押しかけていく。
版図を広げていく白人の側が被害者意識をかかえている身勝手さなど、典型的な差別主義者のふるまいだ。自身の特権を手放したくないがため、平等を求められることが不当に感じられるのだ。