古典的なSFホラー設定の、2018年の米国映画。字幕のみで無料配信を二週間。
天才生物学者ヘンリーは、特許で巨万の富をえて引退していた。そして美しく若い女性エリザベスを妻にして、山間で孤立した近代的な屋敷へと迎える。
ヘンリーはエリザベスに一室だけ入ることを禁じるが、ヘンリーが留守にしている時、暇をもてあましたエリザベスは扉を開けてしまう……
ホラーサスペンス『ゴシカ』の脚本をつとめたセバスチャン・グティエレスが監督と脚本をつとめた。
クローン設定は配信のあらすじや映画ポスターなどのキービジュアルで最初から明示。どんでん返しを楽しませることより、クローンを前提としたドラマを重視している。
冒頭30分でひとつの事件を終わらせるほど展開がスピーディーで、派手なVFXや特殊メイクはないが監禁ホラーやスプラッター描写でホラー感満点。
タイムループSFではないのに、同じ展開がくりかえされる描写がシチュエーションの地獄感をよく表現している。
ドラマとしては、究極の美女をクローンで求めるというより、失われた家族を再生させようとあがくことが男の根本的な動機なのが面白い。
ヒロインがクローンと自覚することで自我を確立する一方、周囲のアイデンティティが崩れていく対比も興味深い。
これはあわれな美女の悲劇というより、男の妄執にどのようにヒロインや関係者が巻きこまれ、どのように脱出していくかという物語だ。
つまりは家父長制へ反逆する寓話をSFホラーの形式で描いたといって過言ではないだろう。