2018年の米国映画。初無料配信が字幕と吹替で1ヶ月足らず。
逮捕されかけた密入国者が自爆し、米国内で大規模な自爆テロが発生。
イエメンからメキシコをテロリストが迂回するルートを断つため、アメリカ政府はメキシコの裏社会を混乱させる作戦をたてる。
秘密裏に送りこまれた工作員は、密入国をとりしきるカルテルに攻撃をしかけ、内乱をひきおこそうとする。しかし……
ライオンズゲート製作のシリーズ2作目だが、2015年公開の1作目からスタッフが一新。
ヨハン・ヨハンソンの急逝にともなう音楽担当の交代はしかたないとして、監督は『暗黒街』のステファノ・ソリマになり、主演女優は登場すらしない。事実上のスピンオフになっている。
1作目は一般的なアメリカの女性捜査官の視点で、自国が他国で展開する作戦の強硬ぶりについていけなくなる姿を客観的に描いた。
2作目は強硬に作戦を展開する現場の視点で、超大国アメリカは外国に介入してテロを止める権利と義務があるのだと描いていく。
今どきイスラム系を偏見丸出しでテロリストとして登場させ、子供を巻きこんで自爆するあたり、同時多発テロ直後のドラマ『24 -TWENTY FOUR-』のよう。
……そうして次々に陰謀をしかけていくアメリカの工作員だが、こちらも子供を巻きこむあたりから風向きが変わっていく。やがて政府はおよびごしになり、作戦目的が根底から崩れる情報がもたらされる……
もちろんテロリストを肯定はしないし、暴力的な密入国業者も罰せられていくが、その密入国業者にも良心の欠片があることも描かれる。暴力ではないコミュニケーションの重要性もアクション映画とは思えないほど時間をとり、悪の打倒とは異なる場面で不思議な余韻をもって終わる……
つまり、犯罪防止のためなら公権力が何をやってもいいのかと最初から疑問視した1作目に対して、何をやってもいいと実行してから問題点に直面する構成にしたのが2作目というわけだ。
1作目のほうが客観的で見やすいと思うが、2作目のほうが落差が強烈で、それぞれに別の良さがある。
銃撃戦も、2018年にツイッターのハッシュタグを集計*1して13位に入った1作目を、さらに超えるしあがり。
VFXを使っているとはいえ日常的な空間を破壊しつくす自爆テロの迫力はもちろん、メキシコの市街地で拷問のようにおこなわれる銃撃も、カーチェイスと組みあわせた銃撃戦も、見どころたっぷり。
そうした破壊の快感を描く銃撃戦だけでなく、茶番劇としての銃撃戦ごっこや、一発一発に痛みがある射撃も描かれる。暴力に対する疑問点が増えていくストーリーにそった銃撃演出という観点でも印象的な作品だ。
*1:ギッチョ (id:hakaiya)氏の集計では、2作目は2018年映画全体で40位につけている。