2015年のカナダとニュージーランドの合作映画。ポストアポカリプスを下品にパロディしつつ、真面目なジュブナイルSFとしても楽しめる。
核戦争で文明が崩壊した1997年。まともな燃料も飲料水もなく、人々は小さな自転車で荒地を走り、支配者は人体をミキサーにかけて水を抽出していた。
そんな世界で必死にひとり生きている少年キッドは、コミック本のヒーローにあこがれているところに、不思議な行動をする少女アップルと出会う……
シリーズ最新作も好評だったオーストラリア映画『マッドマックス』を、もともと低予算の本家よりさらに低予算でパロディしたような作品。
低予算ホラーオムニバス『ABC・オブ・デス』のスタッフが製作し、安っぽいホラーの文脈で作りあげた。いかにもな工場を廃屋に見立てて、日本の特撮ヒーローのような採石場らしき場所で戦う。
ニュージーランド時代のピーター・ジャクソンを思わせる人体破壊と大流血も、けしてリアルではない派手さで見てて楽しくなってくる。ころがる生首はマネキン丸出しで、血は明るい赤色で噴水のよう。
しかし昔懐かしのビデオテープを焚火のプラスチック燃料にしたり、自転車をこいで音楽を鳴らしたり、けっこう細部のディテールを努力していて低予算なりにSFらしさがある。
御都合的なロボット技術もストーリー上でさまざまな展開につながって使いきっているから、ただ思いつきで出したような安っぽさがない。
そして青春ジュブナイルSFらしい成長譚としても意外とよくできていた。
虚構のヒーローに憧れた少年がひょんなことから能力を手にいれて、その能力で活躍することでヒーローらしく成長し、能力を失ってもヒーローでありつづける。
かわいい少女との出会いも男につごうのいい幸運ではなく、会話の通じない相手とコミュニケーションし、別離によって旅立ちのドラマへ展開していった。