麻薬戦争を描いた2015年の米国映画。要ログインのR15で、字幕と吹替でひさしぶりの無料配信を約一ヶ月。
突入した屋敷に隠された無数の死体を見つけた捜査官のケイト。その情報を買われるように、メキシコへの潜入作戦にスカウトされる。
ケイトは一員として作戦に従事し、さまざまな戦いにたちあいながら、協力する隊員への不信感をつのらせていく……
『灼熱の魂』のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督による、女性FBI捜査官の地獄めぐりのような物語。
銃撃戦の評価は監督を交代した外伝的続編『ボーダーライン: ソルジャーズ・デイ』が高いが、それは相対評価であって、この作品も素晴らしい。
一見すると普通の住宅への車両による突入、渋滞した国境線上の高速道路、暗視スコープで突入する洞窟のような敵本拠地……手を変え品を変え見たことのないシチュエーションで、演出としての派手さをおさえつつも刺激的な戦闘が描かれて、アクション映画として見ごたえあった。
境界線を描くにあたって俯瞰を多用した撮影なども面白い。街頭で人々が吊るされているメキシコの風景や、並行する別の道路で間接的に展開されるカーチェイスなど、多くの人々が住む街の広がりを表現しているところも見どころ。
映像として面白味があるだけでなく、主人公のケイトが手をとどかせる範囲のせまさを実感させる演出として成立している。
行って帰るだけの意外とシンプルな物語で、どんでん返しで驚かせるサスペンスでもないが、見終わると不思議なわりきれなさが残る。よくできた映画だ。