1981年に大作志向の角川映画と東映が協力して映像化した作品。濡れ場に乳首も描写されるが、R15ではない。
戦国時代に存在したと伝えられる謎の男「果心居士」が、平蜘蛛の茶釜で知られる松永久秀に幻を見せたという逸話をふくらませた作品。
これがデビュー作となる渡辺典子は、違う出生をたどった双子の姉妹と、その生首を移しかえた敵の女を一人三役で演じた。なかなかの役者ぶりだし、同居する場面で使われる合成は現在に見ても違和感ない。
近年は斬られ役が専業となった殺陣師、福本清三の悪役ぶりも意外な耽美さが良い。最も強い手下くらいの立場だが、現場のリーダーとして適度に存在感がある。
奈良の大仏と東大寺の実物大セットも、角川映画らしい大がかりなもので、僧兵がいりみだれる中盤の乱戦をもりあげる。炎上する外観はよく見るとミニチュアのようにも感じられるが、けっこう大がかりなスケールで作っているらしく、むしろ特撮のアナログさが楽しい。
そして同じ姿の女性を使った騙しあいの果てに、物語は異世界での数奇な運命を描いて終わる。
ちょっと面食らったというのが正直な感想で、ロザリオで敵を倒す描写の連続ともども宗教映画のような印象をおぼえざるをえなかった。
しかし、主人公の殉教を見たことで果心居士が不思議な器の大きさを見せた結末に、ちょっと不思議な文芸性を感じたことも事実である。
あと、あまり原作ファンからの評判が良くなかった別作者による続編シリーズ『バジリスク桜花忍法帖』の結末は、この『伊賀忍法帖』へのオマージュなのかもしれない、とも気づかされた。
追記:インターネットで調べると、炎上部分のミニチュア特撮のメイキング写真を映画ライターが紹介していた。
ミニチュアといっても普通建築=2階建ての大きさ…角川映画『伊賀忍法帖』(82)の特撮に使用された6分の1の東大寺! (*1階の屋根に人が乗っているのが分かる) pic.twitter.com/m0QIDXh2w9
— 七涙八喜 (@superexpress109) December 18, 2018
やはり推測どおりにミニチュアだったわけだが、かなりの大スケールで、当時の角川映画の勢いを感じさせる。