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精神科医が直面するヒッチコック風サスペンスを現代映画のよそおいで『サイド・エフェクト』(01:45:53)配信期間:2022年4月26日~5月25日

数年前から何度か配信されている2013年の米国映画。全裸のセックスシーンや流血もあるため、要ログインのR15で、一ヶ月無料配信。

gyao.yahoo.co.jp

ビル街のとある一室で、流血の事件が発生したらしい。少し時間をもどして、インサイダー取引で収監された男が釈放され、妻がむかえる物語がはじまる。ふたりは家族として再生するはずが、妻は鬱をうったえて精神科医にかかり、特別な新薬を処方され……

 

オーシャンズ11』のスティーヴン・ソダーバーグ監督による精神病サスペンス。タイトルの意味は「副作用」で、新薬を処方された女性の奇妙な行動から物語が変転していく。

ロケ撮影の多用こそセット撮影を多用するヒッチコックらしさはないが、建物の空撮から一室にフォーカスしていく冒頭のカメラワークからして『サイコ』を思わせる。人生の再出発というドラマとして落ちつきそうな中間点から、がらりとドラマの方向性が変わる驚きも『サイコ』に似た構成。

詐病」と一言で説明できるシンプルなトリックの方向性は『めまい』を思わせる。早々に真相に気づく者がでてきて、謎解きを引っぱるよりも真相をどのようにあばくかが後半の要点になるところも、さらには主人公が非人間的なまでに「ミソジニー」を発揮する後味の悪さも『めまい』に近い。ついでに「犯人」ふたりが「同性愛」関係にある描写も『ロープ』だろうか。

しかしシンプルなトリックといっても細部を支える描写はていねいで、とある犯罪の動機やそれを実行するための知識の伏線は最初からしっかり存在する。謎を解いてなお解決の難しさに直面する展開も気がきいている。新薬をめぐる策謀もまた全体の構図をひっくりかえすことで驚きを増している。

淡々とした情景から驚かすショック描写の演出もうまくて、特に中盤の「刺殺」もまたカット割りや芝居が『サイコ』の有名な一幕のようで、なおかつ現代的なテンポになっている。全体が抑制されて刺激がひかえめな作品だが、序盤から一定時間ごとに刺激的な場面を挿入することで飽きさせない。

 

全体としてサイコサスペンスというジャンル名を生みだした『サイコ』へのオマージュを感じさせつつ、その「先入観をひっくりかえ」したミステリ映画として面白味があった。

歴史的な傑作とまではいかないにしても、ジャンル作品としての魅力は充分につまっている。ジャンルが好きならば見て損はない娯楽作品。