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ひとつの邸宅に仲良しの男女が集まる一夜の、パラレルワールドSFサスペンス『ランダム 存在の確率』(01:27:55)配信期間:2021年6月3日~6月30日

低予算でつくられた一時間半に満たない2015年の米国映画。感想欄で指摘されているが、GYAO!のタイトル表記が「確立」とミスをしている。

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彗星が近づく夜、仲良しの男女8人がひとつの邸宅に集まった。彗星が近づくと夫が別人になっていたショートショートを語ったり、パーティーが楽しくもりあがる。

しかし突然の暗転から、暗闇に邸宅がとりのこされた。一軒だけ照明がついている邸宅があったが、男ふたりが調べに行くと、まったく同じ邸宅だったという……

 

たったひとつの邸宅と道路、そして自動車だけを舞台に、低予算で完成されたSF映画。ちょっと手持ちカメラのゆれが気になるくらいで、照明や撮影は標準的なので、安心して見ていられる。

外の暗闇はもう少し見えやすくてもいいと思ったが、それは事態の見えなさを表現するために必要で、ひとりがはっきりした目的をもって動く終盤はカメラワークも素晴らしい。

 

並行世界の自分自身が敵となっていく展開に、オムニバスPOVホラーの一編「Parallel Monsters」を連想した。

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こちらはVFXをほとんど使わず、並行世界の同一人物がはちあわせする描写はカメラワークやカット割りで処理して、ほとんどVFXをつかわない。

それでも前ぶれなく画面が割れる携帯電話から、屋外から聞こえる謎の音、謎めいた箱の写真といった小道具でサスペンスをしっかりもりあげていく。

 

パーティーで語られるショートショートホラーで作品の根幹設定を説明して、以降は「シュレディンガーの猫」など定番の科学用語で並行世界について説明。

厳密な考証がされたSFとはいいがたいが、物語に必要な理論はすべて劇中の台詞で説明し、情報が少ないなかで推測しているだけなので、無理なく展開を追っていける。

さらにスピリチュアルな女性をつかって、幻覚の可能性にも言及。異常な状況におかれ、隠していた心理をむきだしにしていく人間のドラマとして成立している。

世にも奇妙な物語』等が好きであれば、問題なく楽しめるだろう。

 

まず箱に入れられていた写真をいつ誰が撮影したのかという謎で引っぱり、ずっと後で動機が解明されるとともに、同時に入れられていた珍しくもない生活用品の意味がわかる。そしてそのありふれた生活用品が、事態の混沌を何よりも雄弁につきつける。

他にも印象的につかわれた小道具が違う展開でも意味をなす局面がいくつもあって、要素に無駄がない。ふくみと余韻を残した結末も見事だ。