ふむめも@はてな

フリームービーメモ。GYAO!、YOUTUBE、バンダイチャンネル、ニコニコ動画、等々で公式に無料配信されているアニメや映画の情報や感想

【再配信】奇妙な味わいの終末の風景『散歩する侵略者』(02:10:17)配信期間:2022年3月26日~4月8日

ホラー作品で知られる黒沢清監督による2017年の奇妙なSF映画。また終了間近だが、無料配信が2週間。

gyao.yahoo.co.jp

平凡な住宅で陰惨な殺人事件が発生し、血まみれの少女が去っていった。事務所につとめるデザイナーの女性が、夫の奇妙な受け答えにとまどう。そして事件を追うジャーナリストの前に、奇妙になれなれしい青年が声をかけた……

 

もとは2005年に初演された舞台劇で、劇団主催者の前川知大自身がノベライズした小説をもとに、『CURE』『岸辺の旅』の黒沢清が映像化した。

評価は原作から離れたオリジナルストーリーのスピンオフ『予兆 散歩する侵略者』が高いらしいが、こちらもホラーじみたSF映画として楽しめる。

 

映像は日本映画としては超A級で端正だが、内容はけっこうB級ホラーSFのよう。

要所のエキストラは人数を集めているものの、あまり予算をつかわないロケや会話シーンが多いし、画面に映るのは人間だけでクリーチャーをVFXで表現したりしない。登場人物が不思議なタイミングで危機感に欠けたり、わざと破滅していく選択などもそうだ。

似た状況設定の『ボディスナッチャーズ』と見比べても楽しいかもしれない。

gyao-youtube.hatenablog.com

しかし台詞は説明的ではなく自然で、観念的な侵略者の行動もシュールで独自性がある。概念をうばわれた人々が奇妙に幸福な姿なところも印象的。

自然なカークラッシュや銃火器のマズルフラッシュ、爆撃の派手なシーン等、VFXの見どころもけっこうある。特にクライマックスで近年の『仮面ライダー』『スーパー戦隊』シリーズに多いロケ地が選ばれていたことに笑った。協力にニュージェネウルトラマンで活躍する田口清隆がクレジット。

いつまでもカットを割らない長回しも、自然なカメラワークで複雑な関係性を写しとり、予期せぬできごとが起こる状況に説得力を与えている。

恒松祐里のアクションも意外な見せ場になっていて、侵略者が憑依した人間の奇妙な歩行や、大人をも倒す身体能力を高い説得力で演じていた。

 

別ジャンルの巨匠が侵略SFの表現を拡張した興味深さもあるし、期待しすぎなければ見て損はない。

gyao-youtube.hatenablog.com