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植民地の姫が宗主国に連れ去られた後、抵抗運動に参加する仮想戦記アクション『ラスト・プリンセス 大韓帝国最後の皇女』(02:06:56)配信期間:2020年10月31日~11月20日

王朝末期の姫の人生を大胆に脚色した、2016年の韓国映画。初無料配信が字幕と吹替で約3週間。

gyao.yahoo.co.jp

朝鮮王朝が倒れた後、大韓帝国の初代皇帝となった高宗は、日本の支配に反発しながら暗殺らしきかたちで死をむかえた。

その愛娘の徳恵翁主は幼くして日本へわたり、さまざまな政治にかかわりながら、やがて抵抗運動にくわわるが……

 

数奇な運命をたどりながら歴史から忘れられた女性。それを架空のヒロインとして再構成した小説を原作に、『八月のクリスマス』等のホ・ジノ監督が映画化した。

生誕や晩年は史実を参考にしつつ、映画としての見どころは中盤の抵抗運動。実際にあったら日本でも知られているだろう爆破作戦から脱出劇まで、娯楽色たっぷりにアクションを展開する。

もちろん史実の徳恵が抵抗運動にかかわった記録などはなく、日本にわたった初期から統合失調症に苦しんでいたらしく、この映画でプリンセスについて学ぼうとすると誤解をまねく。

日本映画でいうと『この世界の片隅に』や『アルキメデスの大戦』のような、歴史にさまざまな願いや悔いをたくしたフィクションと理解して観るべき作品だろう。

 

あくまで架空の女性史としては波乱万丈で見ごたえたっぷり、中盤の会話が終盤で拾われる伏線も見事で、ひとつの物語として楽しめる。

もちろん日本は侵略者だが夫個人は徳恵をいつくしんでいたり、戦後の韓国側がプリンセスを見捨てたことも念入りに描いたり、ナショナリズムと距離をとろうとしていることもうかがえる。

 

さすが韓国映画らしく銃撃戦や爆破の描写は素晴らしく、オープンセットをクラシックカーが爆走する脱出劇も迫真的。徳恵が抵抗心をはぐくむ朝鮮人労働者も、しっかり多数のエキストラを用意し、VFXとセットを併用して労働現場をしっかり再現。

晩年の徳恵を新聞記者がたずねる1960年代も、戦前とはまた違った時代が表現されていて良かった。

ただ終盤の老人姿は、白髪や皮膚のシミや猫背の姿勢だけで表現。顔に皺ひとつなく、現代水準の特殊メイクとは言いがたい。最後に実際のモノクロ写真が紹介されることもあって、若い俳優が演じている雰囲気が出てしまっていた。

あと、日本語と韓国語が混在する作品なので、演出意図をくむためには字幕版で観るべきなのだが、韓国人俳優の日本語はどうしても違和感ある。朝鮮出身者以外の日本語台詞は、日本人俳優以外は日本人の声優にふきかえてほしかった。物語を楽しむだけなら吹替版をすすめる。