朝鮮独立運動に爆弾がもちこまれた事件をふくらませた、2016年の韓国映画。名優ソン・ガンホを主演にむかえた佳作が、字幕のみで一ヶ月無料配信。
朝鮮人でありながら大日本帝国の警察官として、独立運動の捜査をつづけるイ・ジョンチル。
義烈団をとらえるため独立運動家に近づき協力するイ・ジョンチルは、はたして何をしようとしているのか……
ホラー映画『箪笥』やハリウッドにわたってシュワルツェネッガーを主演にむかえた『ラストスタンド』で知られるキム・ジウンが監督。
1923年に起きた爆弾密輸事件を中心的モチーフとして、ひとつの武装独立運動の鎮圧を娯楽活劇として描いている。
冒頭からして日本警官の集団的な身体能力がすさまじく、独立運動側の抵抗とあわせてスタントアクションの見せ場になっている。
それ以降も巨大セットなどで再現された当時の上海と京城を行き来しながら、日本側と韓国側がたがいにスパイを送りこみあい、やがて爆弾密輸をめぐるサスペンスフルな捜査がはじまる……
列車や駅のセットで、奥行きのある空間や立体的な足場をつかったアクションが見どころいっぱい。独立運動家が隠れるアジトも多種多様で、歴史映画として映像が充実している。
中心的な日本の上司として、鶴見辰吾を起用。支配者としての器の大きさと残忍さが同居したキャラクターを堂々と演じた。見事な演技で日本の支配にくだった朝鮮人の素朴な日本語を差別化。吹替でなくても、設定にあった日本語で違和感がない。
さらにハンガリーから協力に来た無政府主義者や、ただいくつかの爆破をおこなうだけの抵抗運動に限界を指摘する裏切者など、単純な独立運動にとどまらない人間関係が作品世界の広さを感じさせる。
流血の痛々しさなども、さすが韓国映画といったところ。それでいてエンタメとして適度な爽快感があって、裏切りがつづく物語なのにストレスが大きすぎない。
日本批判よりも朝鮮人同士の葛藤のドラマに重きを置いているので、日本人としても見やすい。意外と全体のバランスがとれた佳作だ。