『新感染』のヒットにつづく、韓国には珍しい2018年のゾンビ映画。もう終了したが、初無料配信が一ヶ月未満。韓国映画には珍しく、吹替版もある。
外国からもちこまれた、人間を夜鬼という怪物にしてしまう感染症。それが朝鮮半島の港町に広がり、廃墟と化していた。
さらに夜鬼の存在は首都でも噂されていたが、王は意にそわない周囲を敵視するばかり。すべては王朝をゆるがす陰謀によるものだったが……
『コンフィデンシャル/共助』のキム・ソンフン監督が、チャン・ドンゴンをむかえて作ったゾンビ時代劇。
ゾンビ映画なので流血も身体損壊もたっぷり描かれるが、R15にならないくらいなので、意外と残酷さは感じない。いきなり襲いかかってくる夜鬼の描写など、ゾンビ映画の定石は押さえているが、現代とは距離のある時代の物語なので迫真的な恐怖はあまり感じない。
どちらかといえば大作時代劇が主軸であり、架空の妖異を導入して娯楽性を増したといったところ。
描かれるのは、感染症の脅威を無視する政権の責任と、その蔓延を私欲のため利用しようとする政争の愚かしさ。この映画が公開された少し後、新型コロナが世界的に蔓延する偶然こそが恐ろしい。
主人公の王子が無責任な楽天家ながら剣は凄腕なこともあり、恐怖に追いつめられるサスペンスホラーより、恐怖をうちたおしていくアクションホラーとして楽しむのが良いだろう。
夜鬼は基本的に全力疾走せず、体をねじらせながらゆっくり近づく。それでいて手をついて四足歩行になった時は屋根をのぼったり、すさまじい跳躍をおこなう。そんな古典的なゾンビの遅さと現代的なゾンビの速さが同居した描写のバランスも個性的。
現代韓国映画らしくVFXは世界標準で、廃墟となった港町や首都のセットもよくできている。普通の時代劇ならば衣服の生活感が足りないが、戦いなどでボロボロになったり夜鬼の汚れた姿と対比するためだろう。