植民地状態の朝鮮半島を舞台とした、2015年の韓国映画。字幕のみで2週間無料。
森の奥に建てられた当時では最新の校舎に、ひとりの少女が転校してくる。「静子」という日本名をつけられて。
「静子」は体が弱く、級友から疎外されていたが、身体能力が優秀な「和恵」と仲良くなった。
しかし「静子」は以前に同名の少女が消えたことを知り、やがて恐怖に飲みこまれていく……
リリカルで百合っぽく、謎めいたサスペンス展開は小説『ミネハハ』を原作とする『エコール』や『ミネハハ 秘密の森の少女たち』のよう。
白い制服を白人の少女たちが身にまとったそれらの映画に対して、こちらは黒髪の少女たちが黒い制服を身にまとう。前半の息苦しい雰囲気は素晴らしい換骨奪胎だ。日本映画的なホラー演出もよくできている。
ただし日本人の観客としては、劇中の日本語がたどたどしいことは気になる。日本語の台詞にもカッコつきで字幕が表示されるほど。なかには日本人になろうとする朝鮮人もいるのだが、おそらく最初から日本人の設定と思われるキャラクターも日本語の下手さは大差ない。吹替版があればそれを鑑賞したのだが……
そしてちょうど映画の中盤から、一気に恐怖が明確な姿であらわれるだけでなく、物理的な脅威として恐怖が描かれていく。
そこには空想科学的な真相が隠されていて、日本軍の科学力もかかわってくる。かつての欧米ホラー映画の設定にナチスドイツの超科学が利用されていたようなものだ。
もちろん現代の韓国映画らしく描写のひとつひとつはよくできてはいる。特に脱出しようとする少女たちを絶望につきおとす光景は完成度の高い映像技術で処理されていた。
少しずつ段階を踏んでサスペンスから歴史SFへ変化しているので、実際に見ると違和感はあまりない。少女たちを虐げる側にも力関係があると示していく展開も悪くなかった。「刺繍」の描写はひさびさに韓国映画の暴力の凄味を感じた。
ただ、日本軍と少女が格闘戦をくりひろげる場面はさすがに「何を見ているんだろう自分は?」という気分をおぼえたし、前半で期待させたリリカルさが後半では薄くなっていくので、あくまで『エコール』的な部分はプロローグと理解して観るのが良いだろう。