漂流船を舞台とした1999年の大作VFX映画が2週間無料配信。
ロシアの宇宙ステーションから謎の通信がとどき、ロシアの巨大観測船がパニックになる。
1週間後、台風で沈没寸前となった貨物船が、漂流する巨大観測船にたどりつく……
ジョン・ブルーノは、この映画が実写初監督。それ以前はアニメ映画の監督をした後、主にジェームズ・キャメロン作品の視覚効果を手がけていた。
さすが特撮スタッフ出身だけあって、映像面は今見ても素晴らしい。冒頭にしか出ない宇宙ステーションからしてミニチュアも合成も精度が高い。巨大観測船は上に人間が乗れる13メートルの巨大なミニチュアを作ったといい、水飛沫や火炎のスケール感も違和感ない。
メイキングを見るのが好きです�A(ミニチュアと水): 中年ライダータバスコの「7割くらいは映画のはなし」
特に「ヴァイラス」は「T-2」や「アビス」で特殊効果を担当したSFXマンが監督しており、その特撮に対するこだわりがすごいです。
冒頭からハリケーンに翻弄されるタグボートのシーンも大迫力、そして13mの大きさの観測船が波にのまれ、最後には大爆発。
メイキングでは、船のミニチュアの説明よりも、マシーンと人間が合体してできたボーグのような生命体のアニマトロニクスの説明の方が10倍尺を取っていましたが、個人的には船のミニチュアのメイキングの方がグッときますね。
アニマトロニクスや特殊メイクに、発展途上のCGを併用した敵の描写も楽しい。大作映画にしては景気よく人体が破壊され、娯楽ホラーとして満足感がある。
俳優陣も充実していて、キーファー・サザーランドの実父ドナルド・サザーランドが欲望にまみれた船長を演じたり。すでにベテランでありながら、メカと融合した半裸の特殊メイクで怪演した。
ただいかんせん物語は平凡で、逃げこんだ閉鎖空間で謎の怪物に襲われていく古典ホラーと何も変わりない。漂流船そのものが怪物という展開も、映画公開の約十年前に漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の1エピソードで読んだ*1。
一応、あまり恋愛関係でベタベタしない良さはある。ふたりいる女性が足をひっぱるだけではなく、かといって『エイリアン』のように女性ひとりだけ残る「ファイナルガール」パターンでないことも感心はした。有色人種を美化しすぎず愚鈍にも描かない慎重さも悪くない。
しかしSFとしての面白味が設定にないし*2、脇役のほとんどが目先の欲望にとらわれてキャラクターの幅がせまい。
巨大観測船のなかで敵の謎を解いていく展開なのに、船内の位置関係がわかりづらいのも難点。どこからどこを目指して移動しているのか理解できないので、敵がいきなり現れても驚けない。最後のちょっとした引っかけも古典的すぎて驚きがない。
本編が約1時間半と短く、映像の見せ場も多いので、見ている間は楽しめるが、良くも悪くも後に残るものがなかった。