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自主制作SFを発展させた結果の、貧乏な労働者とコンピュータが自己に悩んでいく寓話『ダーク・スター』(01:22:58)配信期間:2021年2月20日~3月19日

遊星からの物体X』で知られるジョン・カーペンター監督が、製作・音楽・脚本のすべてを手がけた初長編映画。一ヶ月無料配信。

gyao.yahoo.co.jp

人類が危険な惑星を爆撃で消去し、植民の用意をしている遠い未来。船長は事故で倒れ、残された少数のクルーが爆撃用の宇宙船を運用していた。

助けもない宇宙空間の孤独を癒すため、ひとりのクルーがエイリアンを船内にペットとしてもちこむ。しかしペットは好き放題に動きはじめ……

 

1974年の映画。現在から見ると全体的に安っぽいが、宇宙飛行士を生活感ある薄汚れた作業者として描いたSFとして先駆的だ。

1979年ににリドリー・スコット監督のSFホラー『エイリアン』の脚本と原案を手がけるダン・オバノンが主演し、さらに共同脚本や特殊効果なども担当。

完全自主制作を長編化した「ハリウッド」映画だが、少数スタッフで無理やり完成させた自主制作の雰囲気が残っている。

 

ピタッと無重力空間で静止する宇宙船などに違和感がなくもないが、『スター・ウォーズ』1作目の3年前と思えば、ミニチュアの精度も合成のクオリティも自主制作としては大健闘だろう。

ビニール風船のようなエイリアンとの戦いは安っぽく、他のクルーときちんと連絡をとらない行動に違和感はあった。しかし、あくまで猿くらいの知能のペットに手を焼いているだけとわかれば納得できる。

そもそもエイリアンとの対決は、より大きなトラブルに発展する段階のひとつにすぎなかった。本当のドラマはクルー同士のディスコミュニケーションと、コンピュータとのディスコミュニケーションだ。そしてそれぞれのキャラクターが自己の存在を信じられなくなっていく。

遊星からの物体X』や『ゼイリブ』など、カーペンター監督がホラーやSFの枠組みで描きつづけたドラマの原型がここにある。

 

そして自己の立場に確信をもてないキャラクターたちが、それぞれの結論とともにバラバラな末路をむかえていく。

その姿は愚かに見えるが、しかし自主制作から商業映画という世界に人生をかけて飛び出たスタッフの人生にも重なりあう……