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道を外れた保安官と元軍人、自動車と銃撃戦、その戦いの果てに……『ザ・アウトロー』(02:20:01)配信期間:2022年4月30日~5月13日

前半は中だるみしているが、後半は見どころの多い、2018年の米国映画。字幕と吹替で二週間無料配信。

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銀行強盗の多発するロサンゼルスで、重武装の犯罪集団に現金輸送車が襲われる。それはさらなる犯罪計画の準備らしい。凄腕の保安官が構成員に接触しながら、全体像をつかんで一網打尽にしようともくろむが……

 

クリスチャン・グーデカストの初監督作品で、連名での原案や、単独脚本もつとめた。

冒頭の襲撃描写は力が入っていて見ごたえある。緊張感ある対峙からトリッキーな犯行、自動車をシールドに活用した銃撃戦まで、クライマックスの予行演習として期待させる。

しかしそこから犯罪者と保安官のアウトローぶりを説明する描写が1時間以上もだらだら描かれるのはいただけない。それぞれが家族とトラブルをかかえている描写は平凡なハリウッド映画のパターンをなぞるだけで、伏線になるわけでもなく、完全に無駄な時間だ。

どちらの集団も暴力をふるうことはためらわないが、命をうばうことは自制しているので、二重スパイ的な立場におかれた青年を見ていても緊張感が出てこない。さすがに前半部分でも犯行計画の伏線にあたる描写は重要なものの、半分くらいに省略することはできたはずだ。

 

そうして冒頭の期待感がどんどん薄れていくわけだが、後半に銀行強盗が決行される局面からはまた見ごたえが出てくる。

襲撃描写を複雑にスケールアップすることで期待をコントロールしつつ上回り、綱渡りのようにトリッキーな犯行計画をサスペンスたっぷりに見せていく。その警戒厳重な場所も珍しい情景なので、けっこう新鮮味があって見るだけで楽しい。

さらに車道を舞台にした銃撃戦は、ここを見るだけでも満足できるすぐれものだ。全体としても傑作だった『ボーダーライン』の高速道路を思い出させつつ、アンバランスだからこそ突出した魅力が生まれている。

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銃弾が車列を縦断して視覚化される描写の斬新さも他にない。公式クリップ映像の1分42秒ごろの俯瞰映像が特に良い。

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いくつかの違和感を残して事件が決着した後、静かに明かされた犯罪の全体像も悪くない。その説明も長々としておらず、必要最小限で切れ味が良い。

 

最後まで見終えても、前半の伏線パートは無駄が多すぎて、ドラマ部分も凡庸なので、半分に削れるとは思った。映画全体を2時間以内に切りつめれば、無駄のない娯楽作品として傑作になったに違いない。

残念ながら前半の中だるみが足を引っぱっているので佳作とはいいづらい。しかし尻上がりに印象が良くなっていくし、見どころもけっこうあるので、銃撃アクションが好きならば見て損はないだろう。