1970年から1973年にかけて公開された、山本薩夫監督作品。各3時間ほどの超大作が無料配信。
張作霖暗殺からノモンハン事件にいたるまで、日中戦争の泥沼につきすすんでいく日本。破滅の予兆を感じる人間もいるが、多くの人間が欲望にまみれて動きを止められない。
それを五味川純平の歴史小説を原作にして、財閥を中心とした群像劇として、各作品3時間近くで重厚に映像化した。
経営が苦しくなってロマンポルノ制作に移行しつつあった日活だが、戦前からのベテラン監督のコネクションと演出力で、立派な俳優を集めて歴史を感じさせる撮影に成功。
日本共産党員*1だった監督のコネクションで、第三部の戦闘シーンではソ連軍が撮影協力。予算不足ゆえ第四部をつくることができなかったとは思えないほどだ。
『ウルトラマン』の怪獣などをデザインした成田亨も特撮美術で参加し、シリアスなドラマを支えられるリアルな特撮を提供している。
組合活動などに熱心だった左翼として有名な監督だが、群像劇としてのバランスはとれている。
善良な一般市民を力なき存在として描き、権力者を力強く人格をもった存在として描くことで、映画のキャラクターとしては悪役が魅力的なくらいだ*2。
それでいて日本の戦争映画にありがちな終戦間近の日本の被害ばかり描くのではなく、むしろ日本が進んで他国への加害をくりかえしたことを描いて、日本がむしろ自ら破滅にいたった歴史を直視する。今なお貴重な日本映画だ。