社会派メッセージのないエンタメとして、2018年に一部の映画愛好家に愛された作品。初無料配信が字幕と吹替で2週間。
幼いころ、巨大ハリケーンで父親を失った兄弟がいた。成長した弟は気象学者としてハリケーンを調査し、兄は修理業の後継ぎとして財務省の紙幣廃棄部署とも取引していた。
その財務省で紙幣廃棄の直前、ハリケーンを利用した強盗犯が押しいる。街が崩壊するなかで強盗犯と兄弟、そして金庫のコードを知る女性の戦いがはじまる……
トンネル崩壊パニック大作『デイライト』や架空戦闘機との空中戦を描いた『ステルス』等のロブ・コーエンが監督。製作は日本では無名な低予算スタジオが共同でおこない、VFXはイギリスのダブル・ネガティブ等が担当。
本国の評価はあまり高くなく……いや、はっきり低いのだが、ド派手なハリケーンを背景に銃撃戦やカーチェイスがつづくので、娯楽作品としてはけっこう楽しい。
いくつもの街角の巨大セットをつくって、暴風雨で崩壊させながら銃撃戦を展開したり、強風を利用した攻撃をおこなったりする。
ツッコミどころが多いのは事実で、なんといっても財務省が襲撃されたのに当局に連絡をとらない意味がわからない。
衛星回線が通じなかったり、保安官へ会いにいって助けを求めはするが、そもそも電話で通報しない意味がわからない。たいていの人間が携帯電話を持っている時代だし、兄弟の修理工場に逃げこんだ場面などで固定電話もつかえるだろう。
電話回線が完全につかえない設定をどこかに入れるべきだった。たとえ大災害で州軍が出払っているとしても、連絡をとらない意味はない。
ハリケーン描写も話の都合にあわせすぎ。いくら台風の目は暴風がおだやかになるといっても完全に晴れるのはやりすぎだし、その台風の目の境界線がはっきりして竜巻のようだ。
ただツッコミどころの多さも、ハリケーンを利用したトンチバトルを一般人の兄弟がしかけるバカ映画と理解すれば、劇中のルールは一貫して守られている。そういうリアリティの映画と理解して観るのがいいだろう。
あまり出演料の高い俳優は出ていないし、そもそも暴風雨設定で登場人物の数は少ないが、だからこそ低予算作品のわりにビジュアルは派手で、見ていて楽しいことに間違いない。