TVアニメ『翠星のガルガンティア』の後日談として作られた長編OVA。初無料配信が二週間。
相棒のロボット「チェインバー」とともに激しい戦いを終えて、平和をとりもどした船団で生活をつづける少年エド。
陸地が失われた世界において船団で生活するしかないエドたちは、いくつもの困難にたちむかうことになる。
その話を聞くのは、エドが戦った船団から合流した少女リーマだった……
2013年、シナリオライター虚淵玄が『魔法少女まどか☆マギカ』の脚本や『PSYCHO-PASS サイコパス』の原案などで絶賛されていた時期のロボットアニメ。
TV版は『機動警察パトレイバー』等で知られるProduction I.Gが制作する完全オリジナルロボットアニメの新作として注目された。鳴子ハナハルの生き生きと健康的なキャラクターデザインと、高い技術で魅力的なポストアポカリプス世界を描いて、きっちり1クールで起承転結をまとめた。3DCGで描写された無機質なロボットと軽妙な会話をかわすコントラストや、適度に残酷な真実が暴かれるクライマックスもSFらしい。アニメ史に残る傑作とはいわないまでも、期待したぶんは楽しめる作品だった。
2期も企画されたが頓挫し、後日談は長編映画を二分割したようなOVAとして2014年に発表。劇場公開もされた。それがこの前後編だ。
実写でも『海猿』のような作品がないわけではないが、日本ではディザスターパニックを映像化することが難しい。
この作品の前編では、人気シリーズがいったん戦いを終えた後、敵のいない日常でディザスターに直面するという状況設定で、日本ならではのディザスターパニックを魅力的に描きだした。
周囲を圧倒する能力はあるが一体なので限界があるチェインバー。潜水艇の延長のような機能しかもたないロボット。異なるディザスターに直面しつつ、あきらめない人間を力強く描く。
いくつもの老朽艦をつなげた船団を襲う嵐をリアルな3DCGと手描き作画で表現し、対処する人々も名も無きひとりひとりまで個性のある存在として動かしていた。