『最後まで行く』のキムソンフン監督脚本による2016年の韓国映画。初無料配信を一ヶ月。
帰宅途中にトンネルが崩落し、車内で閉じこめられた男。周囲は瓦礫だらけで身動きがとれない。画面のひびわれたスマートフォンに電波がとどいて救助を要請することができたが、相手には緊張感がなかった……
現代の韓国映画らしい、よくできた作品だ。
トンネル崩落や救助作業に大規模なセットやVFXを活用した大作でありつつも、ハリウッドのパニック映画のような見やすい作りではない。
主人公は泥まみれ埃まみれで見苦しく、全身を見せる場面もほとんどない。息苦しく閉塞した場所で、ストレスのかかるサバイバルがつづく。
絶望と希望が断続的におとずれて、けして単調ではない作品だが、あまり爽快な娯楽ではない。しかしブラックな風刺作品としてはよくできている。
さすがに大崩落を目の当たりにした救助隊は全力をつくすようになる。三枚目な救助隊の隊長*1は好感をもてるし、感動的な瞬間はいくつもある。
しかし政治家は救出劇への参加をアピールしつつ、新たなトンネル工事を優先する選択肢を考える。
マスコミは悲劇にとらわれた家族を助けもするが、売れるネタとして群がり救助の足を引っぱる。
最後まで主人公を助けようとする家族さえ、社会の圧力に押し負けていく……
もちろん感動の救出劇を期待しても最低限度は楽しめる作品になっているが、そのような感動を求める観客をも映画は批判的に描いていく。
経済を優先して手抜き工事をくりかえし、個々人を無視するような社会の構造を壊さなければ、問題はつづいていくのだ。