宮沢りえ主演で1988年に実写映画化されたジュブナイル小説を、後日談としてアニメ映画化して2019年12月に公開。早くも24時間だけ無料配信。
大人たちへの反乱を描いた原作に対して、もはや反乱する気がない現代の子供の立場で語りなおした。
原作と実写は『ぼくらの七日間戦争』というタイトルで、時代を移したアニメ版がアラビア数字になっているので区別しやすい。
制作は『忍たま乱太郎』等の子供向けアニメで知られる亜細亜堂。近年は青年向け深夜アニメも多く作っているので、危なげなく映像化できている。
監督は若手の村野佑太。亜細亜堂の生え抜きで、複数のTVアニメの監督経験も積んでいて、演出面では問題ない。
廃坑を使った巨大カラクリのような篭城戦、旧実写映画の戦車を超えるビックリドッキリメカなど、映像作品ならではの面白味にあふれている。
脚本は『革命機ヴァルヴレイヴ』が批判を集めた大河内一楼。
しかし香港独立運動で国際的に再評価されたように、革命への不信感が広がる日本において真面目に社会への抵抗を模索しつづけている作家のひとりでもある。
今回の映画では、廃鉱により貧困化していく地方都市と、不法移民という立場に置かれた子供、さらにある種のマイノリティを配置して、現代的な観点で社会の抑圧を描き、すがすがしい解放感を描いた。
かつて若者だった大人の反抗心や、インターネットの多面性、子供社会の不和なども描写。短い尺で多面的なドラマが楽しめる。
いかにもボーイミーツガールな青春恋愛映画になるかと思わせて、ひとつの仕掛けで根底からひっくりかえしたのも面白い。下心のない友情の美しさが、何も持たない主人公を主人公たらしめる。