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【再配信】軍事独裁政権と闘う人々と報じる人々、ふたつの光州事件を民主化運動記念日に『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』『光州5・18』(02:17:22/02:00:07)配信期間:2022年5月16日~5月29日/5月18日~6月7日

1980年に韓国の光州で市民運動が虐殺された歴史を、内側と外側から記憶する映画。5・18光州民主化運動記念日に合わせるように2週間の無料配信。

 

2017年の『タクシー運転手』は『高地戦』のチャン・フン監督。字幕と吹替で楽しめる。

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お金めあてでドイツ人記者を横取りしたタクシー運転手をソン・ガンホが好演。現地で反政府運動と政府の弾圧に巻きこまれ、逃げようとしながら、少しずつ人々へ親身になっていく。

最新のVFX技術と念入りな小道具の用意で、40年前の激動を見事に再現した。人間ドラマとして重厚でいて、アクション映画としてのカタルシスもたっぷり。

現在の世界各地でも見られる問題を、メディアが報じて市民が助ける意義があるのだと力強く訴える。

 

2007年の『光州5・18』は『ザ・タワー 超高層ビル大火災』などのキム・ジフン監督。

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こちらは現地のタクシー運転手が反政府運動に身を投じる家族に距離を感じながら、政府の弾圧を受けて少しずつ反抗心をめばえさせていく。

韓国の当時まだ技術力が足りないVFXは必要最小限で粗を見せない。大規模なエキストラとロケハン、弾着のようなアナログ撮影の迫力で内戦のような動乱を描く。

はげしい戦闘描写が説得力を支えて、なぜ戦わなければならなくなったのか、現地側の視点を記憶する映画となっている。

 

どちらも純粋に映画として完成度が高いし、同じ出来事を違った技術と作風で違った視点から見つめる興味深さもある。必見。

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【再配信】無能なスパイ~コメディタッチでシリアスな韓国潜入アクション~『シークレット・ミッション』(02:04:10)配信期間:2022年5月10日~6月9日

ビー・デビル』のチャンチルス監督による、2013年の韓国映画。字幕と吹替で、何度目かの約一ヶ月無料配信。

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成績トップのリュファンが韓国にスパイとして潜入して2年。頭の足りない男を演じながら雑貨屋に住みこみ、近所の子供たちにバカにされていた。

しかし圧倒的な肉体は維持して、他の潜入スパイとの連絡も欠かさない。人前でバカを演じて恥をかく任務をつづける。しかし……

 

2010年代初頭、韓国映画のアクション演出が世界水準に達したことを裏づける作品のひとつ。

けして映画好きに注目された作品ではなく、スタッフの過去作品も特にアクション重視というわけではない。それでも肉体をつかった格闘戦から、屋根から屋根へつたうパルクールアクションまで、現在でも充分に見ごたえある映像にしあがっている。

まだVFXは浮き気味だが、技術が足りない部分はリュファンの心象風景につかって、演出に昇華している。

 

物語としては、バカを演じる潜入スパイという脇役ならば定番の設定を、主人公として前面に出したところが特色。

バカを偽装するためにモザイクつきで排便までやらかす。

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そこから敵地で生活をおくりながら一般住民にとけこんでいくドラマを見せていく。

住民は聖人君子ではなく、子供たちは母子家庭に悩みつつリュファンをいじめるし、雑貨店の女主人もリュファンの介護はするが働けない分を安月給*1から引く。

しかし、そのように完璧ではない平凡な人々だからこそ、エリートなリュファンにとっていとおしい存在になっていくのだ。

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*1:20万ウォンという説明は、約2万円という台詞に変えるか、字幕で説明するべきだと思った。この障碍者らしい給金でも、貯めて北にもどれば大金持ちだとリュファンが喜ぶ描写で、祖国の貧しさがわかる。

いつかの戦時下における軍国主義の日本で、逃避する男と女の白昼夢『白痴』(02:26:39)配信期間:2022年5月11日~6月10日

坂口安吾の短編小説を、同時代的に長編化した1999年の日本映画。セックスシーンなどがあるためか、要ログインのR15で。

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爆撃により廃墟と化しつつある日本の下町。そこの建物は奇妙にゆがみ、狂った男や女が生きていた。テレビ局でプロパガンダ映像の制作を手伝っている主人公は、ぼんやりとした自殺願望をもちながら、狂った女と出会う……

 

手塚治虫の息子として知られるビジュアリスト手塚眞が、手塚プロダクションで製作した大作実写映画。

新潟県に新設した巨大で奇妙なオープンセットや、東映特撮のスタッフの技術を引きだした空襲シーンなどのVFXは見ごたえある。白痴の女を描写するにあたって特殊メイクや細かいデジタルエフェクトも活用していて、映像面ではほとんど隙がない。

太平洋戦争末期という明確な時代設定を捨てて現代とも過去ともつかない舞台で描いたのは賛否がわかれるところだろうが、監督としては平和主義者の父にならって右傾化する日本社会に警鐘を鳴らしたかったのかもしれない。

プロットや細かい描写は意外と原作を踏襲しているが、『未来世紀ブラジル』のようなディストピアSFの一種として観るのが良いだろう。