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フリームービーメモ。GYAO!、YOUTUBE、バンダイチャンネル、ニコニコ動画、等々で公式に無料配信されているアニメや映画の情報や感想

邦画では見ごたえある特撮と、駆け足すぎる脚本、下手な演技と演出のおりなす不協和音『デビルマン』(01:55:26)配信期間:2022年5月11日~5月31日

2004年の伝説的な漫画実写化作品。2020年にニコニコ生放送で無料配信されていたが、おそらくGYAO!では初無料配信。

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牧村家で息子のように育てられた不動明は、何やら怪しげな行動をしている親友に誘われて、悪魔の力を宿してしまう。それは世界をゆるがす人間の悪魔化をめぐる戦いのはじまりだった……

 

TVアニメと同時並行で連載され、独自の物語で歴史的な傑作となった永井豪のホラーアクション漫画『デビルマン』。それを不良漫画『ビー・バップ・ハイスクール』の実写映画化で成功した那須博之監督が、東映で予算を獲得して大作映画として完成させた。

公開時に注目を集めた駄作というには、俳優が下手なだけの大味な大作映画なので、意外と普通という感想もあるかもしれない。

 

まず、スーパー戦隊仮面ライダーシリーズで知られる東映特撮は、TVやその劇場版では早さを優先した安い映像ばかり見せるが、必要とあれば高い技術力を提供することはできる。

東映の一般映画へ提供する自然なVFXもそうだし、白組の初期作品『リターナー』や『ガメラ3 イリス覚醒』などへ補助的に参加した時も国内有数のVFXに劣らない映像を作り出していた。

この『デビルマン』も通常より予算を獲得しただけあって、シレーヌとの空中戦やクライマックスの都市崩壊バトルなどは、当時なりによくできた3DCGとミニチュア特撮で見ごたえある映像を作りだせている。

 

問題はとにかく俳優とその演出で、特に演技経験のないモデルを主演に起用したのが痛い。

台詞は棒読みで叫びも迫力なく、生身のアクションも動きがトロい。同じ東映でも、きちんと動ける俳優をオーディションで選んでいる仮面ライダーと比べるべくもない。

舌足らずな発声や子供のへたくそな格闘も不良映画のヤンキーならリアリティがあるといえなくもないが、世界の命運をかけた超人同士の戦いでやられると素直にヘタクソと思ってしまう。くりかえされる壮大な台詞がひたすら薄っぺらい。

しかも脇をかためる大人たちには漫画チックな演出をつけているため、日本を代表する名優ですらヘタクソに見えてしまう。

 

また全5巻かけて時間と空間をかけめぐる壮大なスケールの漫画を2時間におさめる工夫もできていない。

サブキャラクターを削って主人公と親友のふたりのドラマにしぼりこむことも、群像劇として俯瞰的に淡々と時間経過を描くつくりにもなっていない。

特に伏線もなく原作の描写が再現されたかと思えば、いつの間にか次の話に移っていて、事態の経過がよくわからない。さらにその場のノリでつくられたアドリブが流れを寸断する。

 

監督が全体をコントロールできていないがゆえに、意外と長所と短所がはっきりしている。おかげで次々にツッコミどころと見どころがおとずれるので駄作なりにテンポ良く楽しめる作品ではある。ただその落差があるからこそ、短所のひどさがきわだつわけだが……

道を外れた保安官と元軍人、自動車と銃撃戦、その戦いの果てに……『ザ・アウトロー』(02:20:01)配信期間:2022年4月30日~5月13日

前半は中だるみしているが、後半は見どころの多い、2018年の米国映画。字幕と吹替で二週間無料配信。

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銀行強盗の多発するロサンゼルスで、重武装の犯罪集団に現金輸送車が襲われる。それはさらなる犯罪計画の準備らしい。凄腕の保安官が構成員に接触しながら、全体像をつかんで一網打尽にしようともくろむが……

 

クリスチャン・グーデカストの初監督作品で、連名での原案や、単独脚本もつとめた。

冒頭の襲撃描写は力が入っていて見ごたえある。緊張感ある対峙からトリッキーな犯行、自動車をシールドに活用した銃撃戦まで、クライマックスの予行演習として期待させる。

しかしそこから犯罪者と保安官のアウトローぶりを説明する描写が1時間以上もだらだら描かれるのはいただけない。それぞれが家族とトラブルをかかえている描写は平凡なハリウッド映画のパターンをなぞるだけで、伏線になるわけでもなく、完全に無駄な時間だ。

どちらの集団も暴力をふるうことはためらわないが、命をうばうことは自制しているので、二重スパイ的な立場におかれた青年を見ていても緊張感が出てこない。さすがに前半部分でも犯行計画の伏線にあたる描写は重要なものの、半分くらいに省略することはできたはずだ。

 

そうして冒頭の期待感がどんどん薄れていくわけだが、後半に銀行強盗が決行される局面からはまた見ごたえが出てくる。

襲撃描写を複雑にスケールアップすることで期待をコントロールしつつ上回り、綱渡りのようにトリッキーな犯行計画をサスペンスたっぷりに見せていく。その警戒厳重な場所も珍しい情景なので、けっこう新鮮味があって見るだけで楽しい。

さらに車道を舞台にした銃撃戦は、ここを見るだけでも満足できるすぐれものだ。全体としても傑作だった『ボーダーライン』の高速道路を思い出させつつ、アンバランスだからこそ突出した魅力が生まれている。

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銃弾が車列を縦断して視覚化される描写の斬新さも他にない。公式クリップ映像の1分42秒ごろの俯瞰映像が特に良い。

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いくつかの違和感を残して事件が決着した後、静かに明かされた犯罪の全体像も悪くない。その説明も長々としておらず、必要最小限で切れ味が良い。

 

最後まで見終えても、前半の伏線パートは無駄が多すぎて、ドラマ部分も凡庸なので、半分に削れるとは思った。映画全体を2時間以内に切りつめれば、無駄のない娯楽作品として傑作になったに違いない。

残念ながら前半の中だるみが足を引っぱっているので佳作とはいいづらい。しかし尻上がりに印象が良くなっていくし、見どころもけっこうあるので、銃撃アクションが好きならば見て損はないだろう。

【再配信】植民地の姫が宗主国に連れ去られた後、抵抗運動に参加する仮想戦記アクション『ラスト・プリンセス 大韓帝国最後の皇女』(02:06:56)配信期間:2022年5月7日~5月20日

王朝末期の姫の人生を大胆に脚色した、2016年の韓国映画。無料配信が字幕と吹替で約2週間。

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朝鮮王朝が倒れた後、大韓帝国の初代皇帝となった高宗は、日本の支配に反発しながら暗殺らしきかたちで死をむかえた。

その愛娘の徳恵翁主は幼くして日本へわたり、さまざまな政治にかかわりながら、やがて抵抗運動にくわわるが……

 

数奇な運命をたどりながら歴史から忘れられた女性。それを架空のヒロインとして再構成した小説を原作に、『八月のクリスマス』等のホ・ジノ監督が映画化した。

生誕や晩年は史実を参考にしつつ、映画としての見どころは中盤の抵抗運動。実際にあったら日本でも知られているだろう爆破作戦から脱出劇まで、娯楽色たっぷりにアクションを展開する。

もちろん史実の徳恵が抵抗運動にかかわった記録などはなく、日本にわたった初期から統合失調症に苦しんでいたらしく、この映画でプリンセスについて学ぼうとすると誤解をまねく。

日本映画でいうと『この世界の片隅に』や『アルキメデスの大戦』のような、歴史にさまざまな願いや悔いをたくしたフィクションと理解して観るべき作品だろう。

 

あくまで架空の女性史としては波乱万丈で見ごたえたっぷり、中盤の会話が終盤で拾われる伏線も見事で、ひとつの物語として楽しめる。

もちろん日本は侵略者だが夫個人は徳恵をいつくしんでいたり、戦後の韓国側がプリンセスを見捨てたことも念入りに描いたり、ナショナリズムと距離をとろうとしていることもうかがえる。

 

さすが韓国映画らしく銃撃戦や爆破の描写は素晴らしく、オープンセットをクラシックカーが爆走する脱出劇も迫真的。徳恵が抵抗心をはぐくむ朝鮮人労働者も、しっかり多数のエキストラを用意し、VFXとセットを併用して労働現場をしっかり再現。

晩年の徳恵を新聞記者がたずねる1960年代も、戦前とはまた違った時代が表現されていて良かった。

ただ終盤の老人姿は、白髪や皮膚のシミや猫背の姿勢だけで表現。顔に皺ひとつなく、現代水準の特殊メイクとは言いがたい。最後に実際のモノクロ写真が紹介されることもあって、若い俳優が演じている雰囲気が出てしまっていた。

あと、日本語と韓国語が混在する作品なので、演出意図をくむためには字幕版で観るべきなのだが、韓国人俳優の日本語はどうしても違和感ある。朝鮮出身者以外の日本語台詞は、日本人俳優以外は日本人の声優にふきかえてほしかった。物語を楽しむだけなら吹替版をすすめる。

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