ふむめも@はてな

フリームービーメモ。GYAO!、YOUTUBE、バンダイチャンネル、ニコニコ動画、等々で公式に無料配信されているアニメや映画の情報や感想

快楽殺人者と判明しても、彼が国際政治で利用される重要人物のままだったら『V.I.P. 修羅の獣たち』(02:08:26)配信期間:2022年6月29日~7月28日

『新しき世界』『隻眼の虎』のパク・フンジョン監督による2017年のアクションノワール。要ログインのR15で、字幕と吹替の無料配信。

gyao.yahoo.co.jp

謎のアメリカ人と会話した男がビルへ突入する。数年前、北朝鮮で残虐に殺された少女と事件捜査を解任された男。韓国で現場に復帰した刑事が容疑者に目星をつける。韓国へ亡命した若い男が当局とわたりあう。分割されたエピソードのつらなりが異常な結末へころがりこんでいく……

 

物語の枠組みは基本的に韓国の得意なノワールサスペンスのパターン。群像劇的に各陣営の思惑が衝突するさまを、エピソードごとに寸断しながら、ひとつの結末に収束していく。

銃撃や格闘戦やカーチェイスは派手に、中年男たちの折衝は滑稽で渋く。傷だらけの血まみれの被害者と、特権階級で生白い肌の加害者のコントラストも映像として印象的。

そうした定番を国際政治の最前線に組みこむことで、スパイアクションとしての娯楽性が加わっている。常に国家の思惑が優先されるため、庶民や末端がどれだけ陰惨に殺害されても、逮捕に横やりが入り、当局が争うあいだに殺人鬼の暴走を許す。

少女の性器にナスがつっこまれていたことが複数の意味をもったり、組織のはみだしものが利用しあうことすら大国の制御下にあったり、サスペンス映画らしい謎解きもスパイ映画らしい騙しあいも充分。映画公開の数年前という中途半端な過去が舞台となっていることにも意味がある。

なお、1本の映画としてはエピローグがないほうが完成度が高まったと思うが、陰惨な風刺劇を娯楽活劇にとどめるために必要な額縁ではあるのだろう。それ自体の出来も良いので、悪いわけではない。

 

ちなみにパク・フンジョン監督は、近年は現代異能アクション『The Witch/魔女』シリーズをVFX満載で展開している。

gyao-youtube.hatenablog.com

さらに前作の『隻眼の虎』もVFXで動物を描写したように、ジャンルを変えながら韓国なりに最新のVFXを活用するところが作風なのだろう。

この作品も韓国有数のCG制作会社4th CREATIVE PARTYを起用して、朝鮮南北から香港にわたる大規模な事件をそつなく描ききった。