民主化のため戦い犠牲となった若者をモデルにした、2017年の韓国映画。字幕と吹替で初無料配信が一ヶ月。
対共捜査を任務とする部署が、学生を拷問のはてに殺してしまう。普通なら隠蔽するはずが現場が医師を呼んでしまい、さらに頑固な検事が立件に動きだす。同じ独裁政権下の違う部署が不協和音をかなで、民主化運動の熱気により少しずつ全体が瓦解していく……
『ファイ 悪魔に育てられた少年』のチャン・ジュナン監督による歴史映画。CJエンターテイメントには珍しい民主化運動によりそった作品。
あえて1980年代らしい映像をねらっているのか、いちいち人物説明でストップモーションして、タイプライター音とともにテロップが表示される演出が楽しい。照明などもレトロな味わいがある。
もちろん古臭い演出の低予算作品というわけではない。カット割りのテンポ感などは現代的だし、細部まで当時らしい服装や風景を再現しているし、天候による心情演出も自然。終盤のアクションもサスペンスフル。悲惨な事件がつづくなかで、ちゃんとライトな恋愛やブラックな笑いをはさんでエンタメとしても見やすい。
やや登場人物の行動が類型的で、誰もが正義をなそうとする決断が早すぎて、音楽演出ともどもプロパガンダっぽさを感じなくもない。
しかしわかりやすく歴史を紹介する映画として完成度は高い。エンドロールで映される実際の映像は映画の印象そのままで、それを堂々とたたえる作品を大作として公開できたこと自体が感動的だった。