1988年に劇場公開された完全新作のアニメ映画。何度目かの無料配信を一週間。
たまたまシリーズ別作品『機動戦記ガンダムF90』のラスボス、ボッシュ・ウェラーの背景として後づけ活用されて話題になっただけに、タイミングが良いというしかない。
第1作からゆいいつシリーズにかかわりつづけた富野由悠季監督が脚本もつとめ、個人的なフィルムとして完成されている。
副題にあるように、戦争に巻きこまれて少年兵となった主人公アムロよりも、そのライバルとして敵国内で暗躍していたシャアがドラマの主軸。
そもそもアムロの人間的な成長はシリーズ第1作で完結しているので、第2作以降は表舞台から退いていた。その期間に主人公側で暗躍をつづけ、アムロとも共闘していたシャアが、ついに高い理想をもって全てを終わらせようとした、そんな物語の終着点が描かれる。
テロリストと愚連隊になったふたりが、その激情をぶつけあうドラマは刺激的で、巻きこまれる人々も刺々しい。そんな救いのないドラマの果てに、かすかな希望が残される。
他スタッフも第2作以降の流れを汲んでおり、キャラクターデザインは『機動戦士Zガンダム』の北爪宏幸が、メカニックデザインは出渕裕がそれぞれ担当。
シンプルな線で破綻のない立体としてデザインされたことで、現在に鑑賞してもアニメの映像としてまったく古びていない。
ていねいな作画でよく動くメカアクションは、それだけで一見の価値がある。