2010年のスペイン映画。『パニック・ルーム』や『ファニーゲーム』に似た、平和な家に侵入者がやってくるパターンの1作品。
郊外の豪邸にひっこしてきた三人一家。しかし一人娘は友達とパーティーをしたいと主張して母親とケンカする。
とはいえ、裕福な家族のささいな衝突はすぐおさまり、さっそく生活を楽しもうとするが……
1時間半に満たない短い時間で、ジャンルコンセプトを素直に映像化した作品。中途半端なひねりを入れず、全力でサスペンスをもりあげていて飽きさせない。
『スペイン一家殺人事件』というタイトルではないところがポイントで、安全なはずの自宅で自由が制限される不快感を重視。1カットの長回しを多用して、逃げられそうで逃げられないストレスを演出している。
うまくやれば助けられる局面が何度もあるが、パニックになった被害者と、敵味方のボタンのかけちがいで、暴力とともに監禁が長引いていく。侵入者にとっても暴力という無駄な手間はかけたくないのに、最悪の展開へ転がり落ちていく……
同ジャンルの米国映画や韓国映画と違って、BGMが主張せず、暴力のほとんどを予感にとどめている抑制が印象的。
しかし低予算なため暴力シーンを描写できないわけではなく、そういう場面もきっちりリアルに映像化できている。
さらに横長のアメリカンビスタサイズを、画面分割演出として活用。分断された家族の危機を同時進行で描くことで緊迫感が高まりつつ、「分割画面」が「再会時」に「一画面に収束」することで「救出の安心感」を演出した。意外なまでにテクニカル。