2015年に玉木宏主演でドラマ化した御手洗潔シリーズの、2016年の映画版。東映の刑事ドラマを、やや豪華にしたような作り。
磔にされた夫婦と、彼らから誘拐された赤ん坊の死体。瀬戸内海の小島に流れつく正体不明の死体。謎の外国人集団が出没する中で、すべてがひとつの犯罪に結びついていく。
分厚いハードカバー上下巻にわたる原作から、メディア展開すると問題が出そうなカルト宗教要素を排除しつつ*1、きちんとひとつの事件が成立している。
原作の見せ場や本筋は保ったまま余剰を省いて、瀬戸内海の中心にあたる広島県福山市への愛憎をもった真犯人のドラマとして整理されている。
ドラマ版でジャニーズが演じていたためか、助手も不在で別俳優が声で出演するのみだが、これも登場人物を削減する効果がある。
偶然がよりあわさって事件が複雑化したというパターンゆえ、構成要素を原作より減らしたことで、真相の説得力が上がっていた。
特に権力のない名探偵が捜査協力したり、架空の歴史小道具が大活躍したりと、まさにシャーロックホームズのようなリアリティのドラマだが、そういうヒーロー作品と理解すれば問題ない。
VFXも日本映画としては悪くないCGだし、冒頭の凄惨な情景はホラー映画のような迫力がある。瀬戸内海の潮流をシミュレーションする「瀬戸内海大型水理模型」で俳優が歩く光景も絵になる。