ロバート・A・ハインラインが1959年に発表したSF短編『輪廻の蛇』を原作として、2014年に公開されたタイムスリップSF。
監督は、極限状況ミステリホラー『SAW』シリーズ最新作『ジグソウ:ソウ・レガシー』に抜擢されたスピエリッグ兄弟。
映画『ジグソウ:ソウ・レガシー』公式サイト 11.10(金)公開
この最新作の宣伝をかねての初無料配信だと思われる。
爆弾魔を阻止する時間移動者の作戦が描かれた冒頭から、過去の時代の酒場で接触した男から奇妙な半生が語られる。そうして映画の半分をしめる語りの後、その半生にどのような背後関係があったのかが描かれていく……
この『プリデスティネーション』は、観客がSFの約束を知っていることが前提のつくりで、あまり台詞で説明せず物語を展開していく。しかし『ドラえもん』や『シュタインズゲート』でタイムパラドックスに慣れている日本の観客には充分だろう*1。
どこまでも自己愛的で孤独な人間のドラマとして、哀しい美しさがあった。
映像も低予算だが、原作の時代性を活用したレトロな近未来感と、落ちついた戦後ニューヨークの情景で、SFらしさを存分に感じさせてくれる。
爆弾魔のテロはほとんど写真記録で処理されるが、冒頭のシークエンスなどで充分にショッキングな映像は提示される。あくまで数奇な時間移動を追いかけていく謎解きとして楽しめばいい。
ただ裸体のボカシが多くて、子作りや性転換がかかわってくる物語のノイズになってしまっているが、日本で視聴するなら我慢するしかないか。
*1:短編の原作にいない爆弾魔を加えて、複雑さを増しているらしい。ただ主人公の上司も一種の変身ではないかと疑ったが、そこまで複雑ではなかった。