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男女が入れかわる実写映画の君の名は。。。竹中直人?!『レオン』(01:39:12)配信期間:2021年2月20日~

同名のフランスのアクション映画とは全く関係なく、『君の名は。』の大ヒット直前に短期連載された漫画を実写化した、2018年の日本映画。

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一代で野菜中心の食品会社を巨大企業に育てた朝比奈玲男(れお)は、仕事には誠実だが、セクハラが多い欠点があった。

その会社の派遣OLの小鳥遊玲音(れおん)は性格がネガティブすぎて、オッパイの大きさが無駄になっていると陰口を叩かれていた。

ある日、自動車でとある場所へ向かっていた玲男は、ハンズフリー携帯電話の放電で事故を起こし、玲音を巻きこんでしまう。

玲音の肉体で目覚めた玲男は、社長として会社をとりもどそうとするが……

 

2016年公開で大ヒットした男女入れかわりアニメ映画『君の名は。』の直前、2015年に女性向け*1情報WEB雑誌で短期連載された『レオン』。それをコメディチックに実写化した。

とにかく玲男を演じる竹中直人の存在感が強い。美女に入った状態で男性とラブコメディを演じる時も、たびたび実際の姿として女装した竹中直人に切りかわる。意外と美脚なことと、玲音を演じる知英と身長が近いこともあって、切りかえに違和感ないことに大笑い。

しかし女装を嫌悪する笑いにはとどめず、異なるジェンダーを生きることで視野を広げる古典的な物語としても意外とよくできていた。

 男性視点で女性の苦労を追体験していくし、足を引っぱるような対立する女性陣にもそれぞれのよさや苦しみがあることを描いていく。1982年公開の映画『転校生』が、入れかわりによって性を学ぶ児童向け作品だったことを思い出させる。

 そこに限らず、男女が入れ替わるジャンル作品をいくつかパロディしながら、違和感のないドラマを展開している。元ネタとは全く違うシチュエーションで、かつ自然に「君の名は」というワードを台詞に入れこんだギャグに笑った。

 

やや女性観客を意識したかのようで、逆に女性側が男性の苦労を追体験したりはしない。お約束の性的描写もキャバクラではたらく場面くらいで、裸体どころか下着姿すら登場せず、それが下品なコメディのようでいて不思議な上品さにつながっている。

竹中直人の姿で男性と恋愛する描写はボーイズラブ的な面白さがある。いつもの竹中直人らしい怪演でいて、ちゃんとラブコメディとしてもりあげていくのがすごい。

知英もネガティブで気弱な女性と、ガハハ社長の人格が入った女性を演じわける。韓国出身の女優だが、まったく違和感なく設定に説得力をもたらしている。

黒幕の敵も外道だが、怪演がきわまることで嫌悪感がわかず、意外とスッキリ見られる楽しい作品だった。

 

原作の要素をひろいつつ、情報が判明する順序を入れかえたり、立場を少し変更することで、よりキャラクターの行動に説得力が増している。

イメージシーンの合成などは安っぽいが、ルームシェアしている部屋から大企業のビルディング、社長のセカンドハウスなど現実描写で必要なリアリティはしっかり確保。

単独で見てもなかなかの佳作だし、ほぼ理想的な漫画実写化邦画でもある。

 

ただ一点だけ明らかな難は、眼鏡を外して美女あつかいされる描写に説得力がないこと。

眼鏡を外すな。眼鏡をつけた状態で美しさがわからない視力の人間こそ眼鏡をつけろ。

……そうアイザック・アシモフなら言うだろう。

togetter.com

*1:前身は男性向けだったが、現在は「40オヤジと大人女子のため」とうたっている。Facebookにログイン

ひとつの湾を舞台にしたコメディチックな中国版アクアマン『人魚姫』(01:33:37)配信期間:2021年2月19日~

少林サッカー』で一世を風靡した周星馳監督の、2016年作品。社会的テーマにとりくみつつ心地良い娯楽にしあがり、アジア興収一位を叩き出した。

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香港の下町の怪しげで安っぽい博物館には、怪生物の偽物ばかりならんでいた。

一方、富裕層は保護区のはずの湾を売買し、虚飾に満ちたパーティーを開いた。

そして湾を開発可能にした青年実業家リウに、奇妙な女性シャンがおとずれる……

 

『美人魚』という原題から想像できないほど、序盤はコメディタッチで人魚たちもマヌケすぎる。

ヒロインの人魚にしても劇中で目が小さく鼻が大きいと揶揄され、実際に地味な顔立ちの女優が演じる。

ポスターで虹色にかがやく美しい人魚のヒレにいたっては、映画本編では全く違うキャラクターだ。

人魚姫(字幕版)

 

 しかし美しいファンタジーを期待しなければ、見どころの多い娯楽作品であることに間違いない。

 

人魚は類人猿から進化したSF的な由来が語られ、環境破壊に苦しむ少数民族としての性質をもっている。巨大な難破船を住居にして、傷ついた体をよせあって、必死に生き抜いている。

それが海を開発して人魚族を完全に絶滅させるだろう実業家へ、暗殺者として美女をおくりこむ。しかし美女は実業家の長所を知ってほだされていく……というパターンの物語だ。

自然をあつかった物語として古典的で、異種婚姻譚という名称もついているが、この映画は恋人の周囲もじっくり描いて、群像劇的な闘争のドラマに発展していく。原典の人魚姫のライバルにあたる女性も、複雑な人格をもつ存在として立ち上がっていく。

 

コメディからシリアスへ転調してからも、巨大セットを舞台としたアクションが素晴らしい。

かつては乱暴さもふくめて魅力だったチャウシンチーのVFXは、技術力を高めつつも自由奔放さを失っていない。はげしい銃撃戦ともどもアメコミヒーロー映画に近い印象だ。

一方、人間側の戦闘は現代の中国映画らしくリアルで、エキストラの殺陣もしっかりしている。その流血の陰惨さは、少数民族の弾圧のようであるし、漁業における乱獲のようでもある。

さらに無駄としか思えなかった序盤が伏線となり、じっくり余韻のある結末をむかえた。

コメディ描写の多さや方向性に好き嫌いはあるかもしれないが、長すぎない尺にさまざまな良さがつまっている。見て損はない作品だ。

 

ところで、コメディタッチのVFXドラマをとおして社会派なメッセージを送りだすところは、高度経済成長期における日本の特撮やアニメも連想させる。

実際にエンディングで確認できるが、意外なところで当時の日本のアニメ作品が引用されている。

冒頭の環境破壊映像を流すところもふくめて、今の中国は当時の日本と同じ段階にあるのかもしれないと感じられた。

チェスボクシングならぬ格闘囲碁を迫真のアクションで『神の一手』(01:57:47)配信期間:2021年2月18日~3月17日

2020年の続編『鬼手』も好評をはくした2015年の韓国映画。たしか初無料配信が一ヶ月。

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プロ棋士のテソクは、兄のために賭け囲碁にかかわり、転落することになった。

しかしテソクは刑務所で協力者をえて、肉体をきたえて復讐の機会を待つことに……

 

まるでチェスとボクシングを交互にやるスポーツ「チェスボクシング」から思いついたような珍奇なコンセプトだが、しかし物語は意外と自然に流れていく。

囲碁や将棋はもともと賭博と関係が深いし、そこから反社会組織の戦いにかかわっていく展開も不思議ではない。

俳優のきたえた肉体と迫真のアクションも、さすが2010年代の韓国映画といったところ。ややコメディが増えつつあるなかで、ちゃんと反社会の外道さも見せていく。

囲碁の描写が説明不足でわかりづらく、アクションエンタメのフレーバーくらいの位置づけなのは残念だが、この種の韓国映画に求めるものは全て入っている。