ドイツとトルコが合作した、2011年の大作映画が初配信。日本では劇場未公開だが、見て損はない佳作。
ドキュメンタリー出身らしい監督が手がけつつ、良い意味でオーソドックスな娯楽活劇としてしあがっている。
冒頭の自爆テロ描写から相当に力が入っていて、その迫力はハリウッド映画と比べて劣っていない。
さらにテロ組織を襲撃する銃撃戦や、室内での格闘戦、狙撃シーンまでハイクオリティで描写され、アクション映画としての楽しみは充実。
ストーリーも明確で、悪くない。いかにもアメリカドラマ『24』を意識したかのような画面分割と素早いカット、現代的な情報戦で、テンポ良く話が運ばれていく。
しかも、視聴者の興味をとぎれさせないためだけにテロと無関係な個人の事情を描きがちだった『24』と違って、テロとスパイにかかわることしか物語に出てこない。それがクールな雰囲気をつくりだし、無駄なく次々に新たな展開へうつっていく。
あくまで敵味方が「細胞」*1に浸透しあうサスペンスと、国家のエージェントは公に顕彰されないという痛みのドラマに徹している。
そしてテロリスト側の事情や思想こそ描かないものの、テロを命じられる末端の人間性はじっくり描いていて泣かせる。
西洋と中東の中間に位置するトルコが舞台なことも特長。現代的な都市と乾いたアラブの街並みが連続する風景からして新鮮だ。
トルコ側で任務につく主人公は、イギリスチームと協力しつつも自国に優位となるよう牽制しあう。ここでイギリス側の窓口となるエージェントがいかにもイギリスらしい老獪な紳士で、独特のユーモアと緊張感にあふれている。
*1:政治組織の小集団を指す用語。