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【再配信】各国の名監督が格差社会を題材にする潮流のはじまり『わたしは、ダニエル・ブレイク』(01:40:05)配信期間:2020年11月15日~11月28日

巨匠ケン・ローチ監督による、2016年のイギリス映画。カンヌ映画祭の最高賞を受けた傑作を、2週間無料配信。

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心臓病をわずらい、主治医から仕事を止められている大工のダニエル。

しかし国から委託された査定業者は労働可能と判断し、ダニエルは職探しのための支援しか受けられない。

腕利きの大工だがデジタル技術にはついていけず、苦労して無意味な履歴書をつくっては、働けるはずもない職探しを形式的につづける……

 

無意味な手続きで市民を福祉から遠ざける国家。そんな不条理を淡々と描く。

BGMはほとんどなく、奇をてらったカメラワークもない。場面が終わるごとに余韻を断ち切るように映像がブラックアウト。観客の感情を派手な演出でもりあげることを徹底的にさけて、選択肢と視野がせばめられていく人々の苦しみによりそう。

ロンドンから引っ越してきたシングルマザーの隣人を助けながら、ダニエルは力不足を痛感し、尊厳が削りとられていく。個人の優しさが手をさしのべる瞬間もあるが、お役所仕事の不条理をはねのけることはできない。

それでもダニエルは苦しみをかかえながら、ふりしぼるように声をあげる。「わたしは、ダニエル・ブレイク」と。記号ではなく、ひとりの人間だと……

 

万引き家族』『ジョーカー』『パラサイト 半地下の家族』といった、競作するかのような動きの初期につくられた傑作として、味わい深い。

後の作品群がフィクショナルな設定を活用していたことに対して、どこまでも現実の今ある苦しみによりそったことが逆に個性的。

フードバンクなどのイギリス特有の制度もていねいに描写され、ドキュメンタリーを見るような興味深さもあった。

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【再配信】乱闘が命を救う、笑って泣けるブラックコメディな朝鮮スパイ映画『スパイな奴ら』(01:55:04)配信期間:2019年11月16日~11月25日

2012年に公開された韓国映画。『インサイダーズ/内部者たち』のウ・ミノ監督の長編2作目。

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韓国に潜入して数十年たつスパイたち。本国からの送金はとどこおり、韓国での日常生活を優先している。そこに新たな亡命者が出てきて、十年ぶりに暗殺計画が命じられたが……という物語。

 

冒頭で現実のスパイ事件を引用しているのが信じられないほど、内容はコメディチック。暗殺計画が発動してからは次々に死者が出ていくが、それも人情劇をまじえながら完全なシリアスにはならない。

BSE問題や現在日本で問題になっているFTAなどの韓国の世相を描き、南北の国家的な対立よりも家族を守りたいと願う男女が戦いに身を投じていく。

暗殺ミッションと同時に別の計画を遂行したり、終盤で主人公が複雑な立場に置かれたり……大切な日常をコメディに、愚かな戦闘をシリアスに、という構図が面白い。

 

もちろん現代韓国映画らしくアクション描写は高水準で、暗殺計画の銃撃戦はどれもハイレベル。

映画『ヒート』を思わせる街中の銃撃戦はハリウッドに引けを取らないスケール感で、主人公と敵の徒手空拳の格闘戦もスピーディでパワフル。

冒頭の出来事がオチにつながる物語構成もよくできていて、あまり韓国映画好きにも知られていないが、なかなかの佳作だ。

 

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山形国際ドキュメンタリー映画祭の受賞4作品『ブアさんのござ』『パンク・シンドローム』『ビラルの世界』『ドストエフスキーと愛に生きる』(35分/85分/88分/93分)配信期間:2020年11月13日~19日/20日~26日

「10代のための映画便」と銘打って、新型コロナ禍で映画を鑑賞するための試みとして期間限定無料配信。 

yidffjp.wixsite.com

2作品ずつ2回にわけて1週間無料配信。

www.asahi.com

前半は、ベトナム戦争で敵味方に分かれた村の住民同士が、酒を酌み交わしながら当時の体験を語り合う「ブアさんのござ」(2011年)、フィンランド知的障害者4人のパンクバンド活動を追った「パンク・シンドローム」(12年)を配信。後半は、ドストエフスキードイツ語に翻訳した女性の数奇な半生をたどる「ドストエフスキーと愛に生きる」(09年)、インド・コルカタで盲目の両親と暮らす3歳の男の子の日常を映した「ビラルの世界」(08年)が見られる。