ふむめも@はてな

フリームービーメモ。GYAO!、YOUTUBE、バンダイチャンネル、ニコニコ動画、等々で公式に無料配信されているアニメや映画の情報や感想

科学と魔術が交錯する街での少女をめぐる戦いを、アニメオリジナルストーリーで描いた劇場版『とある魔術の禁書目録‐エンデュミオンの奇蹟‐』(01:30:06)配信期間:2020年11月12日~11月25日

TVアニメ本編シリーズのスタッフによる2013年の完全新作アニメ映画。Abemaビデオでくりかえし無料配信されているが、GYAO!の無料配信はたぶん初めて。

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超常的な能力をもつ魔法使いや超能力者が覇を競う学園都市では、宇宙へのびる軌道エレベーターが完成間近だった。

そんなある日、相手の能力を打ち消せる少年上条と、居候している少女インデックスは、街頭でライブをする少女に出会う……

 

本編シリーズは3期まで放映が終わり、ほとんど外伝シリーズ3期も今年にCovid-19で延期しつつも好評のうちに完結。

GYAO!ではシリーズ2期まで無料配信が何度かくりかえされている。

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そんな『とある』シリーズを、原作者が作成したプロットにもとづいてアニメ映画化。約1時間半に凝縮されたシリーズの見どころが存分に楽しめる。

宇宙との往還を巡る奇蹟と危機でエンタメらしいアクションと映画らしいスケールを演出し、守られるべきゲストヒロインと攻めてくるゲストヒロインの一対でシリーズの対立構図を表現。

いかにもイベント的にメインキャラクター総出演で活躍させた作品だが、物語の筋立てがしっかりしているので本編の知識がなくても完結した物語として楽しめるだろう。

当時に勢いのあったシリーズなので、作画やCGのクオリティもちゃんと映画らしく見ごたえある。

救出劇をとおして韓国社会を徹底風刺『トンネル 闇に鎖された男』(02:06:39)配信期間:2020年11月10日~11月23日

最後まで行く』のキムソンフン監督脚本による2016年の韓国映画。無料配信を二週間。

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帰宅途中にトンネルが崩落し、車内で閉じこめられた男。周囲は瓦礫だらけで身動きがとれない。画面のひびわれたスマートフォンに電波がとどいて救助を要請することができたが、相手には緊張感がなかった……

 

現代の韓国映画らしい、よくできた作品だ。

トンネル崩落や救助作業に大規模なセットやVFXを活用した大作でありつつも、ハリウッドのパニック映画のような見やすい作りではない。

主人公は泥まみれ埃まみれで見苦しく、全身を見せる場面もほとんどない。息苦しく閉塞した場所で、ストレスのかかるサバイバルがつづく。

絶望と希望が断続的におとずれて、けして単調ではない作品だが、あまり爽快な娯楽ではない。しかしブラックな風刺作品としてはよくできている。

 

さすがに大崩落を目の当たりにした救助隊は全力をつくすようになる。三枚目な救助隊の隊長*1は好感をもてるし、感動的な瞬間はいくつもある。

しかし政治家は救出劇への参加をアピールしつつ、新たなトンネル工事を優先する選択肢を考える。

マスコミは悲劇にとらわれた家族を助けもするが、売れるネタとして群がり救助の足を引っぱる。

最後まで主人公を助けようとする家族さえ、社会の圧力に押し負けていく……

 

 

もちろん感動の救出劇を期待しても最低限度は楽しめる作品になっているが、そのような感動を求める観客をも映画は批判的に描いていく。

経済を優先して手抜き工事をくりかえし、個々人を無視するような社会の構造を壊さなければ、問題はつづいていくのだ。

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*1:オ・ダルスが好演。ただし、このしばらく後にMeTooで告発され、1年半くらい各作品から降板した俳優でもある。被害者らに謝罪し、警察の捜査を受けいれ、昨年に復帰。

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植民地の姫が宗主国に連れ去られた後、抵抗運動に参加する仮想戦記アクション『ラスト・プリンセス 大韓帝国最後の皇女』(02:06:56)配信期間:2020年10月31日~11月20日

王朝末期の姫の人生を大胆に脚色した、2016年の韓国映画。初無料配信が字幕と吹替で約3週間。

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朝鮮王朝が倒れた後、大韓帝国の初代皇帝となった高宗は、日本の支配に反発しながら暗殺らしきかたちで死をむかえた。

その愛娘の徳恵翁主は幼くして日本へわたり、さまざまな政治にかかわりながら、やがて抵抗運動にくわわるが……

 

数奇な運命をたどりながら歴史から忘れられた女性。それを架空のヒロインとして再構成した小説を原作に、『八月のクリスマス』等のホ・ジノ監督が映画化した。

生誕や晩年は史実を参考にしつつ、映画としての見どころは中盤の抵抗運動。実際にあったら日本でも知られているだろう爆破作戦から脱出劇まで、娯楽色たっぷりにアクションを展開する。

もちろん史実の徳恵が抵抗運動にかかわった記録などはなく、日本にわたった初期から統合失調症に苦しんでいたらしく、この映画でプリンセスについて学ぼうとすると誤解をまねく。

日本映画でいうと『この世界の片隅に』や『アルキメデスの大戦』のような、歴史にさまざまな願いや悔いをたくしたフィクションと理解して観るべき作品だろう。

 

あくまで架空の女性史としては波乱万丈で見ごたえたっぷり、中盤の会話が終盤で拾われる伏線も見事で、ひとつの物語として楽しめる。

もちろん日本は侵略者だが夫個人は徳恵をいつくしんでいたり、戦後の韓国側がプリンセスを見捨てたことも念入りに描いたり、ナショナリズムと距離をとろうとしていることもうかがえる。

 

さすが韓国映画らしく銃撃戦や爆破の描写は素晴らしく、オープンセットをクラシックカーが爆走する脱出劇も迫真的。徳恵が抵抗心をはぐくむ朝鮮人労働者も、しっかり多数のエキストラを用意し、VFXとセットを併用して労働現場をしっかり再現。

晩年の徳恵を新聞記者がたずねる1960年代も、戦前とはまた違った時代が表現されていて良かった。

ただ終盤の老人姿は、白髪や皮膚のシミや猫背の姿勢だけで表現。顔に皺ひとつなく、現代水準の特殊メイクとは言いがたい。最後に実際のモノクロ写真が紹介されることもあって、若い俳優が演じている雰囲気が出てしまっていた。

あと、日本語と韓国語が混在する作品なので、演出意図をくむためには字幕版で観るべきなのだが、韓国人俳優の日本語はどうしても違和感ある。朝鮮出身者以外の日本語台詞は、日本人俳優以外は日本人の声優にふきかえてほしかった。物語を楽しむだけなら吹替版をすすめる。