『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男』のユン・ジョンビン監督による、2014年の韓国映画。
肉体は頑丈だが頭が足りない屠畜人の青年トルムチ。貧しさから暗殺に手を貸そうとして、しかし失敗したことから義賊の仲間に身を落とす。
遊郭で生まれた少年ユンが実父の領主にひきとられる。しかし領主の正妻に息子が生まれてしまい、難しい立場に置かれたまま武芸の才能が開花する。
そんなふたりの若者が、貧しい民衆をしいたげる「両班」の支配体制で、対決することに……
流血にいろどられた残酷な世界観で、圧政と解放を描いた史劇だが、雰囲気は明朗快活。
西部劇調の明るいBGMで軽快にストーリーが動く。細かく章をわけて、いま物語がどのような内容なのかわかりやすい。マ・ドンソク演じる怪力キャラなど、義賊集団も魅力にあふていれる。
ひとりシリアスなユンも、冷酷なようで人間にとどまっていることがドラマを味わい深くする。腹違いの弟を殺そうと思いつめながら、寸前でとどまるような良心がかすかにある。
もちろん戦闘シーンはクオリティが高く、殺陣や状況にバラエティがあって飽きさせない。VFXとセットで再現された市街地や義賊の隠れ家も見ごたえある。待ち伏せする場面など、ちょっと特撮ヒーロー番組のようなシチュエーション重視の地形もあるが。
ずっしり重い人間ドラマではないが、長い時間をたっぷり楽しませる娯楽活劇としては必要充分だ。