俳優としてキャリアをつんだ若手歌手ユン・ゲサンと、名バイプレイヤーのユ・ヘジンが三流弁護士コンビを演じる。2015年の韓国映画。
かつてソウルオリンピックで隔離された元ホームレスたちの街が、ふたたび再開発されようとしていた。そこで火炎瓶などをつかった反対運動がまきおこり、発生した「事故」によって警官と若者が死んだ。
その死の責任が誰にあるのか、警官を殴り殺した若者の父親と、若者を殺したとして自白した立ち退き要員の真実をたしかめていく……
モデルとなったのは、龍山事件と呼ばれる大規模な死傷事件。
国連 再開発が引き起こした「龍山事件」の再発防止策を勧告 l KBS WORLD Radio
雑居ビルに立てこもっていた住民が、強制排除しようとした警察と衝突してビルが全焼し、住民と警察官合わせて6人が死亡したもので、今年3月に韓国の7つの人権団体が国連本部を訪れ、「龍山事件」や国家人権委員会の縮小など韓国で人権が侵害されている実態を告発し、国際社会の協調を求めていました。
これを住民と警官の死者をひとりにしぼって、かぎられた手段から少しでも真実をあばこうとする弁護士の奮闘を描く。
強引な再開発で死者が発生した国家の不祥事*1から目をそらすため、指名手配された凶悪犯の顔写真を公開させる政府*2。
検察と判事が癒着しているなかで公平な裁判を求めるため、陪審制度を要求する弁護士側。さらに100ウォンという少額の賠償請求で、欲しているのが金銭ではなく真実という意図を明らかにする*3。
すると陪審制裁判において、検察側は一般人への説明と扇動がたくみな女性検事を活用する……
もちろんデフォルメもされているだろうし、劇中でも異例だという説明はあるが、韓国ならではの日本と異なる法廷描写が興味深く、サスペンスとして見ごたえがある。
もちろん韓国映画らしく抗議デモの描写も迫力満点。
実際に再開発地区らしいロケーションで撮影し、多くのエキストラを動員して、迫真の投石や手ぶれカメラを多用した衝突を描く。ここだけ切りとっても現代史の一ページとして見る価値がある。