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救出劇をとおして韓国社会を徹底風刺『トンネル 闇に鎖された男』(02:06:39)配信期間:2020年2月26日~3月25日

最後まで行く』のキムソンフン監督脚本による2016年の韓国映画。初無料配信を一ヶ月。

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帰宅途中にトンネルが崩落し、車内で閉じこめられた男。周囲は瓦礫だらけで身動きがとれない。画面のひびわれたスマートフォンに電波がとどいて救助を要請することができたが、相手には緊張感がなかった……

 

現代の韓国映画らしい、よくできた作品だ。

トンネル崩落や救助作業に大規模なセットやVFXを活用した大作でありつつも、ハリウッドのパニック映画のような見やすい作りではない。

主人公は泥まみれ埃まみれで見苦しく、全身を見せる場面もほとんどない。息苦しく閉塞した場所で、ストレスのかかるサバイバルがつづく。

絶望と希望が断続的におとずれて、けして単調ではない作品だが、あまり爽快な娯楽ではない。しかしブラックな風刺作品としてはよくできている。

 

さすがに大崩落を目の当たりにした救助隊は全力をつくすようになる。三枚目な救助隊の隊長*1は好感をもてるし、感動的な瞬間はいくつもある。

しかし政治家は救出劇への参加をアピールしつつ、新たなトンネル工事を優先する選択肢を考える。

マスコミは悲劇にとらわれた家族を助けもするが、売れるネタとして群がり救助の足を引っぱる。

最後まで主人公を助けようとする家族さえ、社会の圧力に押し負けていく……

 

 

もちろん感動の救出劇を期待しても最低限度は楽しめる作品になっているが、そのような感動を求める観客をも映画は批判的に描いていく。

経済を優先して手抜き工事をくりかえし、個々人を無視するような社会の構造を壊さなければ、問題はつづいていくのだ。

*1:オ・ダルスが好演。ただし、このしばらく後にMeTooで告発され、1年半くらい各作品から降板した俳優でもある。被害者らに謝罪し、警察の捜査を受けいれ、昨年に復帰。

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時代を現在に移して、新たに子供たちの独立を描く続編『ぼくらの7日間戦争』(01:27:34)配信期間 2020年3月21日(土) 21:00 〜 2020年3月22日(日) 20:59

宮沢りえ主演で1988年に実写映画化されたジュブナイル小説を、後日談としてアニメ映画化して2019年12月に公開。早くも24時間だけ無料配信。

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 大人たちへの反乱を描いた原作に対して、もはや反乱する気がない現代の子供の立場で語りなおした。

 

原作と実写は『ぼくらの七日間戦争』というタイトルで、時代を移したアニメ版がアラビア数字になっているので区別しやすい。

制作は『忍たま乱太郎』等の子供向けアニメで知られる亜細亜堂。近年は青年向け深夜アニメも多く作っているので、危なげなく映像化できている。

監督は若手の村野佑太。亜細亜堂の生え抜きで、複数のTVアニメの監督経験も積んでいて、演出面では問題ない。

廃坑を使った巨大カラクリのような篭城戦、旧実写映画の戦車を超えるビックリドッキリメカなど、映像作品ならではの面白味にあふれている。

 

脚本は『革命機ヴァルヴレイヴ』が批判を集めた大河内一楼

しかし香港独立運動で国際的に再評価されたように、革命への不信感が広がる日本において真面目に社会への抵抗を模索しつづけている作家のひとりでもある。

今回の映画では、廃鉱により貧困化していく地方都市と、不法移民という立場に置かれた子供、さらにある種のマイノリティを配置して、現代的な観点で社会の抑圧を描き、すがすがしい解放感を描いた。

かつて若者だった大人の反抗心や、インターネットの多面性、子供社会の不和なども描写。短い尺で多面的なドラマが楽しめる。

いかにもボーイミーツガールな青春恋愛映画になるかと思わせて、ひとつの仕掛けで根底からひっくりかえしたのも面白い。下心のない友情の美しさが、何も持たない主人公を主人公たらしめる。

墜落した孤島で巨大昆虫の攻撃をかいくぐるB級SFホラーアニメ『巨蟲列島 劇場版』(01:16:22)配信開始:2020年3月

今年1月に劇場公開されたばかりのアニメ作品が、早くも初無料配信。期間は不明だが、ツイッターによると6日には無料開放されていたらしい*1

abema.tv 

最初は単行本に同梱される映像ソフトでアニメ化され、キャンプファイヤーで一般からの出資をつのって長編アニメ化にこぎつけた。

リメイク版映画『電人ザボーガー』の井口昇監督により、約4分間の実写プロモーションビデオも作られている。

www.youtube.com

 

ジャンルとしては『テラフォーマーズ』や『キリングバイツ』に近いか。

身近な動植物が怪物化して襲ってくる状況に、豆知識をつかって対抗する。安っぽいエログロがGyaO!で何度も配信されては低評価されるB級ホラーを思わせて、期待しすぎなければ楽しい。

あまり作画の良くない裸体に、雑なレズシーンが挿入されるのも、そういうジャンル作品と思えば許せる。

*1: