ふむめも@はてな

フリームービーメモ。GYAO!、YOUTUBE、バンダイチャンネル、ニコニコ動画、等々で公式に無料配信されているアニメや映画の情報や感想

怪人と人間の立場がいれかわった社会で抵抗するヒーローの物語『劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロスト』(1:21:00)配信期間:2024年3月20日19時~3月31日

仮面ライダー555殺人事件』等の宣伝をかねて、2004年に映像ソフト化されたディレクターズカット版を約2週間無料配信。

www.youtube.com

 こことは明らかに異なる敵味方が逆転した世界。怪人オルフェノクが社会を構成し、追いつめられた人間は廃墟のような拠点から必死の抵抗をつづけている。そのような世界で救世主として期待されるのが、仮面ライダーだった……

 

 2003年に公開された劇場版に未公開カットやVFXを追加。TVシリーズとは異なる世界観で物語が構成されているため、単独で完結した作品として物語を楽しめる。

 それでいてTVシリーズの人気を利用して、多数の視聴者をエキストラとして募集。TV特撮と並行してつくられた低予算映画とは思えないほど映像に見ごたえがある。その全員をクレジットすることでギネスブックにも掲載された。

 当時のシリーズでよくつかわれたショッピングモールや廃墟やさいたまスーパーアリーナも、正邪が逆転した異世界というシチュエーションで新鮮味がある。VFXも当時なりに多用され、見どころいっぱい。

 あくまで子供向けなのでくだらないギャグや安っぽい小道具も少なくないが、特撮ヒーローが好きなら見て損はない佳作。

現代エンタメとして原典を尊重しつつ、ポスト311作品として光子力の光と闇を描く『劇場版 マジンガーZ / INFINITY』(01:34:48)配信期間:2024年1月26日20時~2月9日20時

大震災を受け、能登出身者であり記念館が全焼する被害もあった永井豪の最新アニメ映画を、2週間チャリティー無料配信。

www.youtube.com

かつて敵が襲ってくる目的だった理想的エネルギー「光子力」。それが世界的な技術革新をもたらすと同時に、異なる世界線から巨大なマジンガー型遺跡インフィニティを呼びよせる。

遺跡からあらわれた人工知能少女を主人公が育てる一方、かつての敵Dr.ヘルがロボット軍団をもってインフィニティを確保。戦士を辞めた主人公は、広報用の後方要員として配置されるが……

 

かつて大ヒットしたロボットアニメ『マジンガーZ』と続編『グレートマジンガー』の物語をそのまま引きつぎ、大人になった主人公たちのとまどいと再起を描いた。

合作漫画家「うめ」のシナリオ担当小沢高広が、外伝漫画につづいて今回のアニメ脚本を担当。生き生きとしたキャラクターで重いメッセージを軽やかに見せる。

古臭いといっていいキャラクターや設定を、現代的な問題をかかえた社会に挿入することで、たがいを尊重すべき存在として浮かびあがらせる。現代アメコミヒーロー映画が成功したメソッドだ。

 

光子力プラントに反対する住民の立看板をチラリと見せたり、マジンガーをめぐるデモを見せたり、意見百出してまとまらない新国連のありさまをDr.ヘルが「多様性」と批判したり。

そうした反体制的な描写が、皮肉をまじえつつも全否定はせず、弱き人々の叫びとして尊重していることも好ましい。

そして強者が世界を動かすのだという敵の世界観を、最終決戦で主人公側の作戦がゆるがす。ロボットアニメとしてのカタルシスが、社会的なメッセージとかさなり、物語を力強く支えた。

 

監督は映画プリキュアシリーズの初期を担当した志水淳児。あまり絵作りがシャープな監督ではないし、飯島弘也の濃厚なキャラクターデザインも現代の流行りではないが、結果的に1970年代作品の直接的な後日談らしい雰囲気がある。

一方、3DCGで描かれた巨大ロボット描写はなかなか良い。原典の解像度をあげればこう見えるだろうというデザインラインの重厚なメカが、ところせましと暴れまわる。

特に最終決戦でのマジンガーZの全身武器っぷりは、主題歌にある「鉄の城」そのもの。直前まで鬱屈した展開がつづいただけに爽快感たっぷりだ。

中盤で量産型マジンガーを主人公が操縦し、一線をしりぞいているのに他のパイロットより巧みな動きを見せた描写も効いている。マジンガーZの全力を引き出せるのが主人公しかいない説得力が、きちんと物語をとおして説明されている。

gyao-youtube.hatenablog.com

戦争のなかで主人公のドラマだけ終えたTVアニメの後日談として、残された者たちのシリアスな苦難を美麗な映像で描いた劇場版『機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-』(1:19:55)配信期間:2024年2月1日21時~2月15日20時59分

1998年に公開された劇場版。キングレコードの公式チャンネルで2週間無料配信。

www.youtube.com

戦争終結から3年後、ナデシコの艦長のミスマル・ユリカと恋人になったテンカワ・アキトはともに行方不明になり、艦長は16歳となったホシノ・ルリがつとめていた。

ひとときの平和のなかでナデシコの見学がおこなわれたりするなかで、戦いを忘れられない者たちがうごめき、闇に落ちたようなアキトが来訪する……

 

會川昇など脚本家がぬけて、佐藤竜雄監督が脚本も書いたことで、あいかわらずパロディは多いがふざけたムードは消え去った。

メインキャラクターの幸福を望んでいたファンには賛否両論だったが、国家と文化の皮肉めいた関係をブラックユーモアにまぶしたTVアニメより単独作品として見やすい。

キャラクターデザインの後藤圭二が作画の全編に手を入れて、現在でも視聴にたえる精度の高い映像をつくりだしている。

 

TVアニメ版はGYAO!などでもくりかえし無料配信され、今回も3ヶ月前に先行配信していたが、劇場版の無料配信はきわめて珍しい。

もちろん時代を感じさせる部分はあるが、一見の価値はある作品だ。